「The Collector of Worlds」(Iliya Troyanov/Ilija Trojanow)

Amazonにて購入:


The Collector of Worlds

The Collector of Worlds



原書はドイツ語↓。著者名がドイツ語表記と英語表記では異なるので注意:


Der Weltensammler

Der Weltensammler



19世紀の冒険家、のちに「アラビアン・ナイト」や「カーマ・スートラ」を英訳したリチャード・フランシス・バートンの生涯(主に前半生)を描いた小説です。バートンについては、Wikipediaで簡潔にその生涯と業績をまとめてあります。


リチャード・フランシス・バートン(Wikipedia)


小説ではインド、アラビア、アフリカでの探検を中心に異国情緒たっぷりの世界が展開します。19世紀という時代背景もあって下手をすれば帝国主義的な視点に流されそうなところですが、さすがに現代小説でそれは通用しません。三人称による客観的な行動描写の裏づけとして、当時バートンと共に行動した現地の人間の発言が折々挟み込まれていますが、この部分がユーモラスかつ批評的でとても面白かったです。バートン自身は確かに現地人以上に「なりきる」のは上手かったようですが、その後の行動からして本当にイスラムなりヒンドゥーの文化に共感して改宗しようとかいう感じでもないようで、文字通りの意味で無信心者だったのかな、という印象を受けました。
謎めいているというか感情移入がしにくいキャラで、だからこそ余計現地人のコメントの方が生き生きと響いてくるのかもしれません。


著者はブルガリア人で幼少時にドイツに移住、その後も世界各地を転々としているジャーナリストで、異文化の魅力とその危険性を熟知しているのだろうと思えました。全くドイツ的な話ではないので英語で読んでも違和感はなかったですが、単語が結構難しくて辞書が手放せませんでした。途中で巻末に簡単な単語集があるのに気がつきましたが、うう、もっと早く気づいていれば…。