ドイツ映画祭2008、始まる


●公式サイト:http://www.germanfilmfest.jp/


うわあ全部観たい…と思えども、とりあえず無謀にも初日3本立てを試みてから後の計画を練ることにしました。
(「今度3本立てで映画観る」と相方に告げたら「…ポルノ?」と聞かれてしまった。違いますっ)


1本目は「ノースフェイス −アイガー北壁」(原題:Nordwand)
(●作品解説:http://www.germanfilmfest.jp/sakuhin.html#nosu



(映画予告編)


かつて「山岳映画」というジャンルがドイツ映画の伝統にあったということは『ナチ娯楽映画の世界』を読んで知りました。
私自身は上るのは坂道くらいで結構、というくらい山登りには無関心なのですが、それでも史実に基づいて展開された物語は
非常に理解しやすく、また大画面で観る登攀の厳しさや雪崩などの大自然の猛威の恐ろしさは迫力満点で、いちいちビクビクッ!と
反応しながら鑑賞してしまいました。最近日本でも登山が流行っているようだし、上手く販促すれば山男さんが大勢観に来るんじゃ
ないかなあ、と思いながら観てました。いやしかし私は絶対あんな危険な山登りはしたくない!


BRUTUS (ブルータス) 2008年 11/1号 [雑誌] Esquire (エスクァイア) 日本版 2008年 12月号 [雑誌] 岳 (1) (ビッグコミックス)

ワンダーフォーゲルくらいならなんとかなるのか…いや、きっと私のことだから遭難するに決まっている…。


余談ですが、ヒロインが地味な不細工顔なところがドイツ映画らしいよなあ…と思ってしまいました。もうちょっと整っていれば
白バラの祈り」のユリア・イェンチに近づきそうだけど、それでも近そうでかなり遠い感じ…。演技力?リアリティ?
うーん、しかしもうちょっとなんとか…。


映画上映後は監督さんと主演の一人、フローリアン・ルーカス君の舞台挨拶とQ&A。実は私の真の目的はこれにありました。
フローリアン・ルーカス君は「グッバイ、レーニン」で主人公を助けて一緒にビデオを作ってた気の良い友達役の俳優さんで、
ドイツにいた頃は彼の出ている映画を探して観るのが楽しみだったのでした。この映画の中でももう一人の主役の男性が無愛想で
無口な男くさい山男(ヒロインはこっちに惚れてる)だったのに対し、人懐こくて親しみやすい山登り大好き人間を好演していました。


Q&Aで印象に残った発言を幾つか。
いま「山岳映画」を撮る意味について質問された監督は、30-40年代にナチスの宣伝と深く関わった反動で、戦後山岳映画に対する
印象が悪くなりほとんど撮られる事がなくなってしまった、今こそ現代的な視点での山岳映画を作ってみたかったと語っていました。
また米国の西部劇が水平方向で未知の世界を開拓するのに対し、山岳映画は垂直方向に未踏の地を開拓しその中で人間ドラマが展開する、
そういう意味で西部劇と山岳映画は実は非常に関連性があるのだ、という話をしてくれました。これは私には新鮮な意見でした。


撮影に苦労したシーンとしてルーカス君は「実は最初の方のバイエルン地方のダンスが一番難しかった!」と笑いを取った後で
彼の演じたヒンターシュトイサーが初めて試みて、後に「ヒンターシュトイサートラバースルート」と名づけられた壁の横断シーンを
挙げていました。


席が前から3番目のど真ん中、という映画鑑賞にはちと近すぎたけど舞台挨拶には最適!の場所だったので間近でじっくり拝見♪
そしてその後ロビーでサインと握手までしてもらっちゃいました、ふふふふふ!サインをしてもらうのにドイツで買った
彼が主演(いや二番手かな?)DVDを持っていったら、さすがにビックリしてましたけど、ハートマークまで書いてくれました。
ふふふふふふふふ!



携帯カメラなのでズームしたら荒い画像になってしまった…真ん中の女性は通訳の方。向かって左側の人が監督さん。



幸せすぎて疲れたので、2本目、3本目は簡単に。
2本目はクララ・シューマンの愛(Gebliebte Clara)」
(●作品解説:http://www.germanfilmfest.jp/sakuhin.html#clara



(映画予告編)


私はクラシック音楽の中ではブラームスが一番好きで、このシューマン夫妻とブラームスの微妙な関係には以前から関心があったし、
クララのワーキングマザーというかキャリアウーマン的な生き方は、当時の基準からすればすごく現代的だなあと思ってもいたので
その辺が映画でどう描かれているか楽しみでした。


配役はとても良かったです。主演のクララ役、マルティナ・ゲデックは「マーサの幸せレシピ」でも見られるように現代的な女性を
巧みに演じていました。腕とかがっしりしていて、いかにも芯が強そう。ロベルト・シューマン役の人はまさしくこれから
精神を病みそう…なエキセントリックな感じが良く出ていたし、ブラームスは若き天才!という好青年振りを遺憾なく発揮してました。


じゃあ何が不満だったかというと、「えーここで終わっちゃうの?ここから先の話を観たいのに!」というところで終わってしまった
こと。映画的にはここで終わらせるのがベストなのかなとも思うんですが、なんかちょっとキレイすぎるな…個人的にはもうちょっと
ドロドロしていても良いかな…。


ところで観るまですっかり忘れていましたが、シューマンデュッセルドルフと非常に縁のある音楽家で、なんたって思い余って
ライン河に飛び込んだのはデュッセルドルフの橋の上なのでした。というわけで映画もほとんどデュッセルドルフが舞台だったのですが
ほとんど街並みは出てきませんでしたので何とも比較は出来ず。ただシューマンの家の周辺の景色は旧市街のあの辺ぽいなーなどと
思ったりしたのですが、実際のロケに現地を使うのは難しいだろうからやっぱりセットなんでしょうね。


1本目と2本目の間は舞台挨拶があったこともあって時間がほとんどなくお昼抜きで臨んだため、3本目を観る前に近所の「CAFE AALIYA」
でフレンチトースト&コーヒーで腹ごしらえ。売りのフレンチトースト(というかほとんどこれしかない)は評判どおりフワフワで
甘くて美味しかったです。雰囲気も騒がしくなくてゆっくりできました。


そして3本目は「クラバート −謎の黒魔術(Krabat)」
(●作品解説:http://www.germanfilmfest.jp/sakuhin.html#krabat



(映画予告編)



原作は未読でしたが、ドイツ東部に伝わる民話を「大どろぼうホッツェンプロッツ」の作者であるプロイスラーが小説に仕立てた
もので、ドイツでは大変人気があるのだそうです:


クラバート(上) (偕成社文庫4059) クラバート(下) (偕成社文庫4060)


映画の印象自体は一言で言うと「ハリポタ系のファンタジー」ですが、原作がしっかりしているのが観ていて良く分かりました。
主人公が始めからダークサイドに招かれていて、その誘惑からいかに脱するかという筋書きが深いなあ…と感心しました。
英国では魔法は学校で習うけど、ドイツではやっぱり徒弟制なのね…とヘンなところに感じ入りました。いつかちゃんと原作読みたい。


映画ファンとしての見所は、主人公の先輩役でダニエル・ブリュール君が出演している事でしょう。可哀相な役ですが、ある意味
オイシイ脇役ともいえます。そしてやっぱりカッコイイので彼のファンだったら見て損はないですね♪(←ミーハー…)。


というわけで大満足だったので、最終日の11月3日にあと2本追加で鑑賞しようと企んでます(「ウェイブ」と「HANAMI」)。
映画、やっぱり楽しいな、もっと観たいな…。