最近読んだ本から

また忙しくなりそうなので、その前にざっくりまとめ:


鯨 (韓国文学のオクリモノ)

鯨 (韓国文学のオクリモノ)

「鯨」:「白鯨」みたいな話かと思ったら違いましたが、筋書きの破天荒さ、荒々しさは正に鯨級。池上永一梁石日を掛け合わせたみたいな激しさがある。鯨そのものはそんなに出てこなくて、むしろ心優しき象さんの方が印象に残るのがなんだか不思議。
この晶文社の「韓国文学のオクリモノ」シリーズは外れなしの良企画でした。韓国の現代文学にはまだまだお宝がありそう!


贋作

贋作

「贋作」:3つの時代を行き来しながら進行する絵画ミステリ。面白かったけどあえて言わせてもらえるなら、サラ、エリーに加えるもう一人の主要人物は、マーティじゃなくて妻のレイチェルにすべきじゃなかったのかな。その方がこの筋書きの裏側にある「女性というだけで受ける理不尽な仕打ち」をもっと立体的に見せることができたと思うんだけど。
一見何の不自由のない有閑マダムのようで陰で不妊治療と上流社会との交流に屈託を抱えるレイチェルが、お坊ちゃまの夫マーティをそそのかしてエリーに罠を仕掛けるもいつしか女性同士は共感を呼びあうように…みたいな展開の方が私的にはスッキリくるかなあ。


ディス・イズ・ザ・デイ

ディス・イズ・ザ・デイ

「ディス・イズ・ザ・デイ」:津村記久子の作品は文章も話の運びも上手くてスルスルと読んでしまう。今回も国内サッカー2部リーグのサポーターたち、というメジャーとマイナーの狭間に立つ人たちの微妙な心情を余すところなく描いて読み応え充分。次々と繰り出され、なるほどこんな切り口もあるか!と納得させられるサポーターの心境の複雑さに胸がつまる。そうそう一口にファンといってもいろんな立場があっていろんな愛で方があるんだよね…と最近ちょっとファン心理をこじらせている私には妙に切実な連作集でした。面白かった!



Poldark [DVD]

Poldark [DVD]

「風の勇士ポルダーク」:GYAOの期間限定配信でシーズン2まで鑑賞。どうしてNHKは「ダウントン・アビー」の後にこれを放映しなかったのかしらん。そしたら以前のヨン様ブーム以上のエイダン様ブームが巻き起こったかもしれないのに!
と言いたくなるほどエイダン・ターナーがかっこいい。話はバリバリにメロドラマだけど分かりやすいし、美男美女のコスプレがとってもよろしい。しかしロスはデメルザをもっと大事にしなさい!そんな仕打ちしたら絶対バチが当たるよ!(怒)
新井潤美の読者としては、英国の階級意識がとっても分かりやすく(ステレオタイプすぎるくらい)描かれていて興味深いです。いくら頑張っても成り上がり者扱いのワーレガン、いやな奴だけど意地悪したい気持ちはわかるよ…。


新井潤美を読んだ後では何を観ても、もう「階級」のことしか考えられない。


これ邦題がスゴイんですが(汗)、ここでエイダン・ターナーが演じてるラファエル前派の立役者・ロセッティがとっても良かったので日本でちゃんとDVD化してほしいなあ。そのためにもエイダン様ブームが必要なんだけどなあ。



「そろそろ<左派>は経済を語ろう」:階級からの連想で。最近の欧州のポピュリズム的傾向を経済学的視点から解き明かしていく内容は、私にはとても勉強になりました。もともと「上/下」の階級闘争だった政党の関係が「右/左」の思想論争にねじれていった結果さまざまな矛盾が生じている、みたいな説明が面白かったので、関連図書を読み込んで色々考えてみたい一冊。