「エアーズ家の没落」(サラ・ウォーターズ)


図書館にて借出し:


エアーズ家の没落上 (創元推理文庫)

エアーズ家の没落上 (創元推理文庫)



うーん、こういう作品って何を書いてもネタバレに繋がりそうなんで、感想が書きにくい…。


超自然ホラーなのか、はたまた犯罪ミステリなのか不明のうちに読者をイライラハラハラさせながら
引っ張っていく技は相変わらず見事。「半身」もそんな感じだったけど、一層複雑に巧妙になった
気がします。しかし後味の悪さもあって欲求不満も残るかなあ…。


一番印象に残ったのは、この作品の「階級小説」っぷり。いま考えればウォーターズの作品って
みな階級差が物語の原動力になっている気がします。やはり本人が同性愛者なので、社会的身分に
限らず広い意味で「お前は私より格下!」みたいな目線に敏感なのでしょうか。
この辺、↓の著者の方の解釈を伺ってみたいところです:



自負と偏見のイギリス文化―J・オースティンの世界 (岩波新書)

自負と偏見のイギリス文化―J・オースティンの世界 (岩波新書)


個人的には特に物騒な事件が起こらなくても、エアーズ家の逼迫する経済事情の詳細を追うだけでも
面白い話になったような気がします。「エアーズ家の家計簿」みたいな。算盤片手にうんうん唸る
キャロラインって案外魅力的では?駄目ですかね…(創元推理文庫的には駄目でしょう)。