「Young Skins」(Colin Barrett)

The Irish Times Book Club の課題本。デビュー作でありながら数々の文学賞を受賞した短編集です:


Young Skins (English Edition)

Young Skins (English Edition)


舞台はアイルランドのメイヨー州、といっても日本人にはピンとこないのでは。私も直接行ったことはないですが、ダブリンが東京なら裏日本側の代表的都市ゴールウェイが新潟か金沢で(じゃあアラン諸島佐渡?)、そうするとその少し北にあるメイヨー州は山形県くらいですかね(←とてもいいかげんなのであくまでイメージで)。まあ特にメイヨー州でなければ、という訳ではなくバブル崩壊後の一般的な地方都市、ぐらいに捉えておけばとりあえずいいかと思います。


特色のない地方の無名都市、しかも昨今は不景気でパッとしない、となればキラキラした日常があるわけではなく、若者の娯楽といえば酒とクスリ、それに異性といちゃつくくらい。閉塞的とは言わないけれど先の展望がそれほどあるとはいえない、そんな若者たちの日常がシニカルに、時に激しい暴力を伴って切り取られていきます。


この作品集のメインとなるのは、「中編」と呼べる分量を占める"Calm With Horses"なのでしょうが、これは内容もかなりヘビーで私は結構疲れました…。それより冒頭の"The Clancy Kid"(こちらで全文が読めます)の終盤のガキんちょとの遣り取りが良かったので次は父子ものとか書いても良いかも、とか思ったり。個人的に一番好きなのは"Diamonds"という短編で、アル中になる人の心の優しさ(他人への共感力とでもいうか)と弱さについて考えてしまいました。


出版社のThe Stinging Flyアイルランドの新人作家を、主に短編小説の分野から支援しているそうで、定期的にチェックしておけば未来の大作家を青田買いできるかもですね。著者ともども今後の活躍に期待、であります。