「The Voyage」(Murray Bail)


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The Voyage

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読むきっかけになったのはこちらの記事。せっかく英語で読めるんだし、オーストラリア文学についてもう少し勉強したいなあと思っていたところだったので試してみました。著者は日本では短編が紹介されたくらいですが本国では寡作ながらベテランといった感じ。


本国オーストラリアで美しい音色を持つ画期的なピアノを開発した Frank Delageは、その新製品の売込みのために音楽の都・ウィーンへ単身乗り込みます。何のつてもコネもない彼を、典型的な上流階級の奥様&パトロネスといった風情のミステリアスな女性、Amaliaは親身に世話してくれるのですが…。


物語は貨物船でオーストラリアに帰国するDelageの回想で始まり、結果的に売込みの結果は芳しくなかったのは読者側にも早々に察しがつきます。市民全員が音楽に一家言ありそうなウィーンの街での「新世界で作られたピアノ?それはそれは(余裕)」的な慇懃な対応がやや諧謔的に描かれます。


回想場面と船内での出来事が途切れなく入替るので最初は読んでいて少し混乱しました。船内の乗客(もともと貨物船なので乗客人数は少ない)も皆ちょっとした悩みを抱えた困った人たちで深入りするとヤバそう。しかも船内でのDelageの傍らには何故かAmaliaの娘のElizabethが…おやおや?


全体的に掴みどころがない感じではありますが、その曖昧さや登場人物の言動の不可解さも含めて「大人の小説」という読了感でした。難解ではないですが爽快でもない、でも読んでる間はニヤニヤしつつ、後で何か心にひっかかる…そんな雰囲気。


著者の作品では1998年発表の"Eucalyptus"がMiles Franklin Award受賞の代表作らしいので、そのうちこれも読んでみたいと思っています:

Eucalyptus

Eucalyptus

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このMiles Franklin Award、調べてみると初期のピーター・ケアリーはもちろん、先日読んだ本で紹介されていた "Question of Travel"や"That Deadman Dance"も受賞してますね。オーストラリア文学、まずはこの辺から押さえると良いのかも。


Questions of Travel

Questions of Travel

That Deadman Dance

That Deadman Dance


上の2冊は、日本での未訳本がどっさり紹介されている↓で紹介されていました。他にもごちそうがいっぱい…。

いま、世界で読まれている105冊 2013 (eau bleu issue)

いま、世界で読まれている105冊 2013 (eau bleu issue)