「In Times of Fading Light」(Eugen Ruge)


kindleで購入。2011年ドイツ文学賞受賞作品の英訳です:


In Times of Fading Light (English Edition)

In Times of Fading Light (English Edition)

原本は↓:

In Zeiten des abnehmenden Lichts: Roman einer Familie

In Zeiten des abnehmenden Lichts: Roman einer Familie


東独を中心に四世代に渡って語られる家族の物語。題名からも分かるように、終焉に向かう社会主義国の歴史がそこには反映されています。


労働者階級でたたき上げの社会主義者である祖父と、それとは正反対に知識人の見本のような祖母は、ナチ時代は社会主義革命が進んでいたメキシコに潜伏を強いられます。とはいえ遠い異国で母国の革命を目指すその活動はどことなく非現実的というか怠惰的…。


父は些細なスターリン批判でソ連強制収容所に送られた世代。そこで現地の女性と結婚し、家族は「雪解け」後に東独へ帰還。父は歴史家として東独の正当性を書物に著そうと日々腐心しています。しかし「西」に憧れた息子(著者の分身)は、遂に西独に亡命してしまい…。


1989年10月1日、祖父の90歳の誕生日パーティに集まる老いた同志達は、はしゃぎながらも「壁」崩壊の予感に怯えています。父は息子の亡命をパーティの直前に知りますが、周囲にどう告げたものか悩みます。この一日を家族それぞれの視点から描く6章の合間に、家族の様々なエピソードが折り挟まれていきます。


物語のもう一つの中心は2001年、病で死期が近いことを悟った息子によるメキシコへの旅です。彼は現地で当時の祖父母の活動の面影を探そうとするのですが…。


社会主義時代の『ブッデンブローク家』」という評を見かけましたが、正にそんな感じで読み応えのある作品でした。端々にニヤリとさせられる皮肉やユーモアが散りばめられており、また登場人物がそれぞれ極めて個性的で飽きさせないためか、東独ものでイメージされる暗くて抑圧的な読後感は無く、むしろ一つの時代の終わりに、ある種の切なさを覚えました。今年最初の読了本として良い本を選んだな、とちょっと嬉しい気持ち。


余談ですが、年末にkindle paperwhiteを購入しました(今ごろ!)。それまではスマホにアプリを入れて読んでいて、それはそれで充分に機能しているのですが、最近は歳のせいか夜中に目が覚めて一時間くらい寝つけなかったりして、その際の「ひっそり読書」にスマホの光源はやっぱりキツいのです。せっかくなので今年は夜中にせっせと洋書を読もうっと。