「The Taste of Apple Seeds」(Katharina Hagena)
ドイツ文学の紹介サイトNew Books in Germanで紹介されていて興味を持ちました:
The Taste of Apple Seeds (English Edition)
- 作者: Katharina Hagena
- 出版社/メーカー: Atlantic Books
- 発売日: 2013/01/01
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (1件) を見る
当然ながらオリジナルはドイツ語:
- 作者: Katharina Hagena
- 出版社/メーカー: Kiepenheuer & Witsch GmbH
- 発売日: 2009/08/01
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログ (1件) を見る
長年認知症を患っていた祖母のBerthaが亡くなり、葬儀に駆け付けた孫娘のIrisは遺言で祖母の屋敷が自分に相続されたことを知る。親しかった従姉のRosemarieが事故で死んでからこの屋敷を遠ざけていたIrisは、突然の事態に戸惑う。自分の母を含め、祖母には3人の娘が居るのに、なぜ孫娘の私が?
葬儀の後、改めて屋敷内を歩き回るIris。祖母の失われた記憶、忘れていたかった昔の自分の思い出をたどり直していくうちに見えてきたもの、それは代々その屋敷で暮らしてきた女性たちの秘められた過去だった…。
女三代におよぶ年代記とも言えますが年代順に出来事が描かれるのではなく、語り手のIrisが折々に過去を振り返るという構成なので、骨太な「サーガ」ものという感じではありません。むしろ丁寧な情景描写やリズミカルに反復する文章が印象に残りました。
題名にもある林檎の樹は敷地内の果樹園にあり、密かな逢瀬の場所でもあります。この林檎を含め果物の使い方がなかなか官能的でさりげなくファンタジック。
全体的にシリアスな雰囲気で物語は進みますが、葬儀で再会した旧友の弟(当然カッコ良くなっていて恋に落ちる)との会話の場面はツンデレのラブコメみたいなノリで楽しかったです。こういうノリで一冊書いてくれても良いな。
先にも書いたように情景描写が細やかで人間ドラマも多彩、これは映画化にピッタリだなあと思っていたら、既に今年9月に本国公開予定で制作進行中とのこと。Iris役が『4分間のピアニスト』のハンナー・ヘルツシュプルングだということで、これは絶対観たいなあ、と思っておりまする。まだ動画がなくて残念。