「週末(Das Wochenende)」(於:ドイツ文化会館ホール「ドイツ映画特集2013 」)


今年もまたささやかに開催されました「ドイツ映画特集」。大箱を借りるのが予算的に厳しいのは分かるから、せめてもう少し会期を延ばして観る機会を増やしてほしいなり…。

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新作5本、どれも観たいものばかりだけど、予定の調整が難しい…それでも何とか2本観てきました。
まず1本目は「週末」。ベルンハルト・シュリンク原作です:


週末 (新潮クレスト・ブックス)

週末 (新潮クレスト・ブックス)

◆読了時の感想はこちら。えっ読んでからもう2年も経つのか。道理で色々忘れてるわけだ(汗):


18年振りに出所したテロリストと再会するかつての旧友たち、という非常に印象に残る設定、しかも演じるのはゼバスティアン・コッホを初めとする錚々たる俳優陣、ということで以前から観たいと思っていました。


で、全体的に良い映画だったのですが、原作の基本設定は押さえつつも映画にはかなり改変が施してありまして、既読者としては観ているうちにあれ?あれ?あれ?と戸惑いが広がってしまったことも事実。えーそこ変えちゃうの?みたいな。純粋に映画だけで判断すれば全く問題ない部分も原作と比べて妙に気になってしまったり、そういう意味では私は良い観客ではなかったようです。


同じような感想を持つ人も多いのでしょうか。上映後に監督に独文学者の瀬川祐司氏が質問する場が設けられたのですが、そこで瀬川氏が主に原作との違いについて的確な質問を投げてくださったので、観ている時は疑問だった変更部分も、監督の意図が分かって「ああそういうことか」と納得できたのが収穫でした。
私としてはもう少し政治的な遣り取りを観たかったのですが、監督は「『社会の変換』を大義としてきたテロリストが、出所して対処しなければいけないのが非常にプライベートな事柄だった」という対比をまず描きたかったそうです。それで映画は原作より「家族もの」っぽい作りになっています。でもちょっとこじんまりしちゃったかな…。


俳優陣はみな素晴らしかったです。ゼバスティアン・コッホは相変わらず渋いし、カーチャ・リーマンも良い女優さんになったなあと感心。トビアスモレッティ演じるウルリッヒは一人だけ当時の赤軍派とは無関係で、それゆえ客観的・批評的に周りを見ているわけですが、そんな異質感というか部外者感を上手く醸し出していたと思います。ちょっとラテンぽい顔立ちだなあと思いながら観てましたが母親がイタリア人と知って納得。


というわけで、原作と比較せずに独立した作品として観ていたらもっと楽しめただろう映画でした。原作未読の人の感想を聞いてみたいものです。