「State of Wonder」(アン・パチェット)
これは結構前から読みたいと思っていたんだけど、割とすぐ翻訳が出るんじゃないか?としばらく待ってみたんですが、その気配がないのでkindle版を購入しました。いやー読んでよかった面白かった!!
- 作者: Ann Patchett
- 出版社/メーカー: Bloomsbury Publishing
- 発売日: 2011/06/06
- メディア: Kindle版
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著者は↓でオレンジ賞を受賞した実力派。これも私は好きでした:
- 作者: アンパチェット,Ann Patchett,山本やよい
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/03
- メディア: 単行本
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米国製薬会社の研究員マリーナは、ある日上司(兼恋人)のフォックス氏から同僚アンダースの死を伝えられる。アンダースは会社が支援している天才女性科学者・スウェンソン女史がアマゾン奥地で進行しているはずの研究の様子を確かめに行っていたのだ。あまりに少ない情報に困惑する会社と家族の命を受けて、今度はマリーナが真相追及のためにアマゾンへ派遣されることになったのだが…。
実はスウェンソン女史が研究しているアマゾンの部族の女性は、70歳を過ぎても普通に子供を妊娠・出産できるらしい。その秘密が周囲の植物に関係しているならば、その成分を利用した薬品を開発して現代の少子化問題などに対処できるのでは?というのが会社の目論みなのだ。
女性の社会進出と出産・育児をいかに両立させるかは、現代社会で避けては通れない問題。その点を遠回しに触れつつ、そんな問題すらビジネスチャンスに転化しようとする企業の抜け目なさも描く設定の上手さにまず感心しました。
現代社会に内在する問題点と、論理では測りきれない超常現象を組み合わせて骨太な物語を形作る…という点で、篠田節子の諸作品を思い出しました(最近読んでないけど)。マリーナがインド系で、若い時に父親に会いに何度かインドを訪れたという過去が、単なる経歴の説明で終わらずアマゾンで体験する過酷な自然との関わりに繋がっていく辺りも上手いです。
加えて登場する女性達がリアルでかつ個性的。なかなか出てこないのに存在感たっぷりのスウェンソン女史やボヘミアン美人ライターのバーバラも良いけど、個人的にはアンダースの妻・カレンとマリーナとの微妙な関係が読んでてゾクゾクしました。男性陣も決して悪くないんですが。
なんでまだ翻訳が出ないのかわからないくらい上手くて面白い小説でした。製薬業界からクレームでもついたのかしらん…。