パウル・クレー展(於:東京国立近代美術館)


今年は教科書に載るような大御所の美術展は極力避けようと思っているのですが、クレーだけは別。
震災の影響で中止になった展示会も多かったですが、こちらは先に京都で開催していたこともあって
東京でも無事開催。ありがたやありがたや。


●公式サイト:http://klee.exhn.jp/
●元 雑誌BRUTUS(ブルータス)副編集長ブログ「フクヘン」より:http://fukuhen.lammfromm.jp/?p=12602



印象派フェルメールレンブラントほどではなくても、それなりに日本でも人気があるクレー。
7月になったら一層混むだろうと頑張って平日の午前中に駆け込みましたが、それでも予想より
混んでいました。特に会場入口周辺はじっくり説明を読んでいる人達が多くてなかなか先に進めない!
みんなー、もうちょっとズズッと進もうよー。お楽しみはまだまだずっと先なんだよ!


今回の展示の特徴は作品1点1点を独立させて見せるというより、どういう制作過程で一連の作品群が
生み出されていったのかをできるだけ分かりやすく解き明かそうとしたところ。
特にクレーの場合「1枚描き終わった。ハイおしまい」という訳ではなく、そこから断裁してみたり
回転させてみたり色を変えてみたり…という実験をそれこそ何年も続けているところが大変面白いのです。
自分の作品をきっちりナンバリングして管理していたのも、実験のための「素材」を最も迅速に、
かつ有効に生かすために整理術だったのでは…とも言われています。
まあ別にそんなことを難しく考えなくても、どの描線、どの色の組み合わせを見ても楽しくなって
しまうのですが…。


表現に対してある種の強迫観念を感じさせる他のアーティストと違って、クレーにはそういう
切羽詰まった印象を持つことは私にはありません。もちろん一つ一つの表現方法や効果をじっくり
考えて形にしていく過程は極めて真摯なのですが、それを安易な自己表現に直結させていないというか、
それよりもっと大きなもの、それこそ芸術そのものに対して捧げものをするような、そんな器の
大きさをいつも感じます。今回の美術展でも多くの手法が披露されていましたが、でもやっぱり
クレーはクレーなんだよなーとばかみたいに感心しながら会場を後にしました。


ユリイカ2011年4月号 特集=パウル・クレー 造形思考のコンステレーション

ユリイカ2011年4月号 特集=パウル・クレー 造形思考のコンステレーション

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