「縞のミステリー」(竹原あき子)


図書館にて借出し:


縞のミステリー

縞のミステリー


文様の中でも一番単純な部類に属する「縞」。身近にありすぎて、文様好きの私でも
さほど気に留めたことはなかったのですが、この本を読んで単純であるがゆえに生じる
歴史的・地理的な広がりに改めて感嘆しました。


日本で縞模様が一般的となるきっかけは南蛮貿易ポルトガル人の豪奢な織物に魅せられた
新進の武士達が身に着けはじめる。様々な文化的コードを駆使しないと読み解けない複雑な
文様と比べ、単純かつ多彩な組み合わせが可能だったことが人気を呼んだのだとか。

織物が経糸緯糸で成り立つものであるかぎり、縞という文様は、織るというテクニックの
中に内在している形だ。構造である糸の直線がそのまま文様として現れる。(P.60-61)


というわけで、折々のファッション文化と密接に結びつきながら話が展開されていきます。
着物好きな人にはこの辺は馴染み深いのかも。私にはとても新鮮でした。


織物と密接ということで、織り手の主役である女性にも焦点が当てられます。
特に印象的だったのは「縞帳」の話。あちこちから集めた縞模様の布の端切れを丁寧に
帳面に張り付け、代々受け継いでいった女たちの姿に心惹かれました。

「布は糸で織った女の日記」と言われるが、縞帳こそ女性の日記の特別なページだった。
どんな間隔でどんな色の縞を造るか、を機織り機に竪糸をかける前に思考をめぐらすための
ページだった。(P.77)


●参考:「縞帳の魅力」(骨董品古美術品オークション 古裂会今日の逸品):
http://blog.livedoor.jp/kogire_kai/archives/1337639.html


上記に挙げた文章もそうですが、著者のきりりとした無駄のない文体がそれこそピンと張った
布のように心地良く感じられて、その点でも読んでいて気持ちよかったです。憧れます。

綿の花は咲くとはいわない。その花は吹くという。乾燥した殻が割れて飛び出る白い綿、
伊勢の畑の夜をほんのりと照らした光、いや日本の農村の夜を照らした綿花の白さは消え、
かわりにインドの糸で織った日本製の綿織物は世界に輸出されはじめた。(P.94-95)


うーん、なんとも名調子。他の著作も読んでみたくなりました。


シミュラークルとシミュレーション (叢書・ウニベルシタス)

シミュラークルとシミュレーション (叢書・ウニベルシタス)

↑この本の翻訳も!