「古典絵画の巨匠たち」(トーマス・ベルンハルト)


図書館にて借出し:


古典絵画の巨匠たち

古典絵画の巨匠たち


天才呪詛師のベルンハルトにしては随分しおらしい題名と装丁。ひょっとして同姓同名の別人?なんて
思ってしまいましたが、原題にはちゃんと「喜劇(Komödie)」と断ってあったようで、開いてみれば正に
ベルンハルト爆弾炸裂のすんごい傑作でした。これ、何も知らずに画家の伝記かと思って読みはじめた人は
ビックリしただろうなあ。


老齢の音楽評論家と「私」がウィーンの美術史博物館のある一室で待ち合わせる、という、小説内の具体的な
アクションはそれだけ(!)なのですが、全方面に対してただひたすらに唱えられる恨みつらみ怒り不満
愚痴いちゃもん悪口言いがかり…の数々に、もはやうっとりしてしまいます。同じ愚痴でも言い回しを微妙に
変えながら何度も執拗に繰り返す文章は、朗読したらとっても盛り上がりそうです。
戯曲も多く書いている作者ですから、その辺のリズムの取り方はもちろん計算済みなんでしょう。


例によって章立てはおろか段落分けも無いままに延々と文章が続くので、丁度キリのいいところで一旦中断しよう、
なんていうことが出来ずにずるずると読み進める羽目になりました。でもでも、面白いから止められないのです。