「ピスタチオ」(梨木香歩)


図書館にて借出し:


ピスタチオ

ピスタチオ


この人の作品には独特の感性と倫理観があって、そこが魅力でもあり、しかし時々それが前面に出すぎて
作品成立の邪魔に感じる時もある、という気がしています。そういう生真面目な人って得てして
「スピリチュアル」な方向に行ってしまったりするので、個人的にはそれは嫌だなあ…と思っているのですが、
この作品はなんとか踏みとどまってくれた感じ。主人公を始めとする登場人物が地に足の着いた人たちとして
きちんと描かれている(丁寧な日常描写や会話が良い)のと、後に提示される現実の重さ(兵士として内戦に
巻き込まれたアフリカの子供達)の前にはいかなる救いも完全な救いには成りえないというやりきれなさが、
霊的なものを扱うときの胡散臭さを取り払ってくれているように思えました。


ただ最後の作中作、本当はこれが一番の肝なんでしょうけど、あえて提示しない方が良かったのでは?
という気が私にはするんですよね…一連の経験がこういう作品に昇華(消化)されました、みたいな
収まりの良さが私には何ともすっきりしません。でも元々児童文学の人だった作者にとっては、この掌編こそ
何より必要なものなのでしょうけど。ちょっとまだもやもやしてます。