「陰影礼讃」展(於:国立新美術館)


●公式サイト:http://www.nact.jp/exhibition_special/2010/shadows/index.html


絵画芸術における影の重要性については↓を読んでいたり、


影の歴史

影の歴史

(美術の「影」だけじゃあありませんけど)


最近では、↓の最初の方でアラマタ氏が西洋と東洋での影の処理法の違いを存分に語っていたのが
とても面白かったので、今回の美術展もそういう文脈で楽しめるかな?とワクワクして行きました:


アラマタ美術誌

アラマタ美術誌

(荒俣センセはいつだって博覧強記)



しかし全体としては(特に前半)そんなにカゲカゲしてない作品が多いように思えました。
「今回のテーマは影!」と最初に言っておけば皆そこに注目しますけど、そうでなかったら
わざわざこの絵の影だけ抜き出して見るかなあ…まあそういうの関係なしに面白い作品もあったので
それはそれで良いんですけど。
あと、今回「陰影」の英訳は"shadows and shades"でしたが、これはむしろ"reflections(反射・反映)"
でしょう、という表現内容の作品も多かったような。そこまで言うのは細かすぎるとは思うのですが…。



後半の写真や抽象もしくはシュール系の絵画の方が、影をいかに表現として生かすかという点に
自覚的である分、私には面白かったです。
特に高松次郎の一連の「影」作品には、やはり圧倒されました。これを展示したかったから、わざわざ
この美術展を企画したんじゃないの?と勘繰ってしまいました。所蔵作品豊富だし。


●参考:「高松次郎《赤ん坊の影 No.122》──限りなく「無」に近づく」(artspace)
(注:この絵自体↑は今回の展示にはありません)
名前だけではピンと来なかったのですが、「ハイレッドセンター」の「ハイ」の人、と知って納得。



シュールレアリズム系の画家、北脇昇氏の作品も印象に残りました。日本でこんな絵を描いていた人が居たとは
不勉強で知りませんでした。西欧の画家とはまた一味違った不安感がとても気になります。


神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

↑表紙画に使われている作品「空港」も展示されていました。うーん不思議…。



締めの大型インスタレーション「もし不審なものを見かけたら…」(クシシュトフ・ヴォディチコ)も面白かったです。
すりガラス越しに写るボンヤリした人の影の動き(実際にはそう見せかけた映像作品)から、内面のドラマを
観る側がそれぞれ想像する、という作品。色々と妄想が膨らみます。



↑同コンセプトでヴェネティアで発表されたもの。実際に向こう側に人がいるわけではありません。



ちょっと当初の思惑とは外れたけど色々と発見があったから良かったな、という美術展でした。