「Das Parfum(香水)」(2006)


ジュースキントの世界的ベストセラー小説『香水』が遂に映画化!ということで先週より上映が始まったのでさっそく観てきました。さほど原作に思い入れはないけど、まあミーハーですから。


Das Parfum. Das Buch zum Film

Das Parfum. Das Buch zum Film

●公式サイト:http://www.parfum.film.de


とにかく話題作なので、ドイツではありとあらゆるメディアで紹介されています。
原作に関する記事でよく目につくフレーズは

「原作は45か国語(46か国語説もあり)で翻訳され、全世界で1500万部を売上げた」

に続いて

「ドイツ語の小説としてはレマルクの『西部戦線異状なし』以来の世界的ベストセラーとなった」

というもの。
えっ『西部戦線…』って原作はドイツ語だったんだ!アメリカ映画の印象が強くて原作が何語なのかなんて考えたこともなかったですよ(焦)。慌てて手元にある『20世紀文学 映画館 (集英社文庫)』(集英社文庫)で確認すると、こちらは「25カ国語に翻訳、350万部以上のベストセラー」だったそうです。


ちなみに少し前に話題になったシュリンク『朗読者』を調べてみましたが、ドイツ刊行後5年で20カ国語に翻訳、アメリカで200万部以上、日本では40万部…というところまでしか分かりませんでした。でもまあこれらの小説と比べても『香水』はケタ違いに売れてるってことですね。



香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)

香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)

日本ではどれくらい売れたのかしらん?



小説そのものに加えて良く話題になるのが作者・ジュースキントの隠遁ぶり。ほんの数作世に送り出したあとはパッタリと著作活動を停止し、40歳を前にしてメディアには一切姿を見せなくなってしまいました。その鮮やかな消失ぶりからサリンジャーやピンチョンらと比較している記事もありました。




悦楽晩餐会?または誰と寝るかという重要な問題? [DVD]

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充分お金はあるだろうし、全く働いていないのかなーと思ってましたが、実はさりげなく上記映画の脚本を担当していたりして。同じ監督の新作「Vom Suchen and Finden der Liebe」(2005)にも共同脚本で参加しているそうな。えっ知らなかった。



肝心の映画ですが、かなり痛快でした!
愛ともヒューマニズムとも無縁の物語をここまで美しく撮ってもらえれば、私としては充分満足。主人公・ジャン=バチストは率直に言って異常なヘンタイですが、彼自身の行動原理は極めて明快なので、共感はしないまでも「ああーやっぱりそうやっちゃうか…」といった感じで観客の読みを決して裏切らない、という意味でなかなか得してるキャラクターです。最後の方は結構彼に肩入れしてたりするんですよね。


監督のトム・ティクヴァは「歴史もの」に求められる風格を残しつつも、実はかなり現代風の演出を試みていて、好き嫌いはあるでしょうが私個人はかなり好み。逆に「ロマンティックな古典劇」を期待して観ると、目が点になっちゃいそう。
物語の主題である「嗅覚」は、なるべく「視覚=眼の快楽」に置き換えようとしていると感じました。映画としてそれは正しい方向だと思います。


原作を読んだときの私の主人公に対するイメージは「汚れた血 [DVD]」のドニ・ラヴァンだったんですが、今回主演に抜擢されたベン・ウィショーも野生味+確かな演技力で素晴らしかったです。もう彼以外のジャン=バチストは考えられなくなっちゃいました。(一時はデカプリオやオーランド・ブルームが候補に挙がっていたそうですが、それは違うやろ!原作では醜男って設定なんだし)
相変わらずシブいアラン・リックマンはもちろん◎ですが、特筆すべきはダスティン・ホフマン、ちょっと面白すぎ!ああいう役柄は演ってる本人が一番楽しそうだなあ。


脚本は英語で書かれたそう(私が観たのもオリジナル英語版)だし、そもそも舞台が18世紀のフランスなので全然ドイツ映画という感じではありませんが、まあやっぱり映画も原作に負けずにヒットしてほしいもんです。頑張れー。




Alles ueber Patrick Sueskinds Das Parfum: Der Film - Das Buch - Der Autor

Alles ueber Patrick Sueskinds Das Parfum: Der Film - Das Buch - Der Autor

「ジュースキントと『香水』の全てがこれ1冊で丸分かり!」みたいな便乗本?
なんか面白そう。