「Academy Street」(Mary Costello)

The Irish Timesの4〜5月課題図書。The Irish Book Awards Novel of the Year 2014受賞やthe Costa First Novel Award 2014の最終候補に残るなど、話題性も抜群なので読んでみました:


Academy Street

Academy Street

Academy Street

Academy Street

経済的保証と自由を求めて戦後アイルランドからアメリカに渡った女性達は多く、彼女たちについてはこれまでにも色々な小説が書かれています。最近私が読んだ中で印象に残っているのは『ブルックリン』(コルム・トビーン)(原書読了時の感想)。様々な経験を通じて成長していくヒロインは朝ドラ的王道路線といえる安定ぶり。


ブルックリン (エクス・リブリス)

ブルックリン (エクス・リブリス)


それに比べると本作の主人公・Tessはかなり受け身な性格で、感情もさほど表に出さない。与えられた状況に淡々と対処して愚痴も文句もあまり言わない。看護婦となってアメリカへ渡るときも、恋に落ちて未婚の母になるときも、黙って決断して一人で実行するという感じ。ずっとこんな感じで最後まで話が進むのか?と、正直読んでいる最中に不安になることもありました。これはTess自身を指した文章ではないけれど"I could fit my whole life on one page"、1頁分のスペースがあれば書き切れてしまうような人生の物語なのか、と。


でもそれが普通の女たちの人生、なのかも。自らを律し、誰かに認められるというわけでもなく、それでも精一杯生きてきたTess。特に縛りの多いアイルランドではなくニューヨークだったから認められた「未婚の母」という選択は、彼女にとって重要な意味を持っているのです。だからこそ終盤の息子との会話と、それに続く出来事が読了後にジワーッと効いてきます。
読書中はちょっと忍耐力が必要だったけど、終わってみるとやっぱり読んで良かったな、と思える作品でした。