「Nowhere to be Found」(Bae Suah)

先々月から個人的に韓国文学ブームだったので、先日英訳が出たこちらを読んでみることにしました:

Nowhere to Be Found

Nowhere to Be Found


最近読んだ一連の作品でも感じましたが、(アジア通貨危機を発端とする?)不況→失業→転落に対する暗い影がこの作品にも色濃く漂っています。ちょっとした幻想にすら逃げ場を求めない分、淡々とシビアな状況描写が続きます。生活に追われ、24歳にして人生に疲れてしまったヒロインの救いのない語りがなんともやるせない。


それだけでは単なる陰鬱な掌編で終わってしまいますが、(韓国でおなじみの)兵役に出た恋人に面会に行く場面はカフカ的な不条理さを思わせて、ここから一気に終盤へ持ち込むあたりが上手いなあと思いました。短くシンプルで読みやすい文章ながら充実した読後感。さくっと読めておすすめ。


(しかし同一人物でも「Bae Suah」「蠔葰亞」「배수아」「ペ・スア」と表記がまちまちで、特に韓国語が分からない私には検索がかけにくいなあ…)