先月読んだ本から

宣言通り8月はあまり本が読めなかったわけですが、実際本当に読めてなくて自分でもビックリ:


北斎と応為 上

北斎と応為 上

北斎と応為 下

北斎と応為 下

北斎と応為』:カナダ人作家の書いた日本の時代小説、というあたりに興味を抱いて読んでみましたが、いやいやこれは(翻訳も含めて)かなりの力作。北斎晩年には代作も多数こなしていたであろう娘・お栄(応為)の一生が虚実を交えて丹念に描かれています。


読む前にちらっと応為について調べたときにネットで見た『吉原格子先乃図』があまりに印象的で、思わず関連図書もいろいろ手を出してしまった…
◆参考「北斎の娘「葛飾応為」が描いた『光の浮世絵』」(DDN JAPAN)
http://japan.digitaldj-network.com/articles/26513.html

百日紅 (上) (ちくま文庫)

百日紅 (上) (ちくま文庫)

百日紅 (下) (ちくま文庫)

百日紅 (下) (ちくま文庫)

応為担担録 (河出文庫―BUNGEI Collection)

応為担担録 (河出文庫―BUNGEI Collection)


日本人作家達の描く北斎と応為の物語は、どこか落語風というか小咄的というか飄々とした味わい。比べて今回の長編小説はいわゆる「女の一生」もので、特に後半はフェミニズム的視点が強くなってくる感じで、現代女性の視点から「女である/娘である私はずっと父親の影に隠れた存在なのか?」という問いを投げかけてきます。実際には、当時は男女に限らず「自我」の確立なんて今のようには考えられていなかったように思えますが、応為という人が現代女性にも通じるような人生(仕事一筋で家事なんてしないとか)だったことは本当のよう。


今月から上野で「北斎展」が始まるそうだし、来年には『百日紅』のアニメも公開予定だということで、これからもっと色々取り上げられそうで期待大。
ボストン美術館浮世絵名品展「北斎」HP:http://ukiyoe.exhn.jp/
◆アニメ「百日紅」作品紹介:http://www.production-ig.co.jp/works/sarusuberi


徘徊タクシー

徘徊タクシー

「徘徊タクシー」:「認知症老人と躁鬱病青年によって導かれる日本のマジック・リアリズム。いいねいいね 」(twitterより)

著者の本は取り上げるテーマが面白くて『0円ハウス』のころから読んでいるのですが、まさか独立国家作ったり躁鬱カミングアウトしたり、さらには今回みたいに三島賞候補になるなんて思ってなかったなあ…いろんな意味で目が離せない人です。応援するよ!

◆参考「カレー、チンして食べたら治りました」:http://synodos.jp/society/9846
この鼎談もすごいよ…


映画はようやく観たこれ↓

◆参考:レビュー「思考し続ける大切さと意志の強さ」(ハフィントンポスト)
http://www.huffingtonpost.jp/hotaka-sugimoto/post_6593_b_4543365.html


アイヒマン裁判の前後でそれまでの友人関係が変化していくところが一つの見どころな訳ですが、映画では友人一人ひとりの背景を丁寧に説明してくれるわけではなく「それでこの人一体誰なのよ?」ということになりがちなので、事前に↓を読んでおくとその辺の理解が深まると思います:

映画で描かれるメアリー・マッカーシーとの信頼関係が、大人の女の友情って感じでとても良かった。


今こそアーレントを読み直す (講談社現代新書)

今こそアーレントを読み直す (講談社現代新書)

↑5年前に出たときも読んでいるはずなのですが、今回読み返してその問いかけの重みを改めて噛みしめました。アーレントから渡された課題を、今の私たちがきちんと受けとめなければ。


さてさて9月は本を読めるのか?読めるのかなあ?