『緩慢の発見』(シュテン・ナドルニー)


図書館で借出し:

緩慢の発見 (EXLIBRIS)

緩慢の発見 (EXLIBRIS)


実は10年くらい前に英語版で読もうと思ったのですが(ドイツでは既に名作扱い)なんだか読みづらくて挫折してしまった作品なのでした。日本語で読めるようになって嬉しーい。


悲劇の探検家ジョン・フランクリンの生涯を描いた歴史小説、ではありますが、一方で独特の視点から「時間とは何かを考えさせる」内容であります。
主人公ジョンは一見「とろい」人間なのですが、その代わりじっくりと観察し、考えを巡らし、実行する、そんな揺るぎなさを秘めています。実際のフランクリンが本当にそういう人だったのかどうかは私には分かりませんが、小説内で存分に描かれる彼の緩慢さというか鈍重さというか熟考ぶりは読んでいてジワジワと癖になる面白さです。読み終わったときに世の中をちょっとスローな感覚で眺めている自分に気がつきました。これは楽しいな。


著者はこれまで小作品『僕の旅』しか日本で紹介されていないけど勿体ない!訳者あとがきによると今も現役でどんどん新作を書いているようなので、翻訳ももっと増えてほしいものです。期待してます。


僕の旅 (新しいドイツの文学シリーズ)

僕の旅 (新しいドイツの文学シリーズ)