「罪人を召し出せ」(ヒラリー・マンテル)


図書館で借出し:


罪人を召し出せ

罪人を召し出せ


前作「ウルフ・ホール」を読んでから、もう2年も経ってしまったんですね(ビックリ)。
基本的な感想は前作と同じ。ただし皆さん歳を取った分、人を陥れるやり口が一層老獪というか深遠というか面倒くさいというか。


国王とアン・ブーリンを結婚させるためにやたら策略を巡らせて小さく固い結び目を一つ一つほどいていくような行為を繰り返し、やっと全部ほどき終わったよ!と思ったら「ごめんやっぱやり直すわ」と言われてまたチマチマ結び出す…みたいな立場のクロムウェル。しかしもちろん変えてしまったものを全く元に戻すわけではなく、巧妙に彼自身の思惑もすべり込ませてある。派手なところはないけれど、この駆け引きにワクワクさせられっぱなしでした。


3番めの王妃となるジェーン・シーモアは、他の作品だと純粋無垢で国王に従順というイメージが強いですが、この作品では何とも不思議ちゃんぽくて、どこまで分かっているのかそれとも全てが計算づくなのか?と掴みどころのない印象的なキャラになっています。あのクロムウェルでさえちょっとグラッとしてしまうのだから大したものです。


さてさて三部作の最終作はどうなりますことやら…といっても後世の私たちは何が起こったのか容易に知ることが出来るわけでして。やはり気になるのはあの慎重なクロムウェルがいつどの時点で何を間違えたのか…という点ですよね。その辺の経緯がどう描かれるのか今からドキドキしてしまいます。


訳者あとがきによると既にBBCでのドラマ化が決定しているようで、こちらもソワソワ。まだまだお楽しみはこれから!です。