『老王の家』(アルノ・ガイガー)

図書館にて借出し:


老王の家―アルツハイマー病の父と私

老王の家―アルツハイマー病の父と私

父が橋を渡って私の世界へやってくることはもはやできないから、私のほうが父のところに出向いてゆかなければならない。橋の向こう側、つまり父の精神状態の許す範囲内で、かつ即物性と目的追求に合わせて設計された私たちの社会を超えた向こう側では、父はいまなお一目置かれる人間なのだ。一般的な尺度からすれば、必ずしも理性的とは言えないにしても、それでもどこか素晴らしい人間なのだ。(P.12)


著者は2005年のドイツ文学賞受賞者で、当時ドイツに居た私はその時に名前を覚えました。その後、自分の父親のことを書いた本が話題になっている、というところまではチェックしていたのですが、日本語版が出ていると知ったのは本当に偶然でした。危なく見逃すところでした…。


Es geht uns gut

Es geht uns gut

ドイツ文学賞受賞作品。


Der alte Koenig in seinem Exil

Der alte Koenig in seinem Exil

日本語版は原書と同じ写真を使用してるんですね。写っているのは著者の父親本人。


もともと父親には多少偏屈なところがあった(歳を取ると誰も多少は頑なになるものですし)ために発症に気づくのが遅れ、そのため家族が父親の行動を悪意あるものと誤解し、全員が無用な疲労を抱え込んだ時期があったことを著者は反省を込めて振り返っています。病気だと認識して対処し、病状もある程度落ち着くと、著者は改めて一人の人間としての父親と向き合うことになります。そして反抗していた青年時代には分からなかった父親の姿が初めて見えてくるようになるのでした。


私自身はまだ介護の経験は無いのですが、もちろん今後可能性はあるし、その時うまく対処できる自信は正直まったくありません。相手が無意識に投げてくるシグナルをちゃんと受け止められるだろうか…そんなことを考えながら読みました。


ペコロスの母に会いに行く

ペコロスの母に会いに行く

先日話題になり、映画まで現在製作中というこのマンガ/エッセイのことをちょっと思い出しました。今度読んでみよう。


皺 (ShoPro Books)

皺 (ShoPro Books)

今度ジブリがアニメ映画を配給するというこの作品は、以前『世界コミックスの想像力』で紹介されているのを読んだときから気になっていました。認知症について知りたい、そこから何か(智慧?尊厳?救い?)を得たいという欲求が(個人的にも社会的にも)高まっているのだろうか、とも考えてしまいました。まだまだ試行錯誤中です…。