「葉蘭をめぐる冒険」(川端康雄)

図書館にて借出し:


葉蘭をめぐる冒険―― イギリス文化・文学論

葉蘭をめぐる冒険―― イギリス文化・文学論

「作品の書かれた時代・場所で大方の人があたりまえのこととして知っていたらしいが、あたりまえすぎて記録に値するとはみなされていなかったような事柄、言いかえると〈共通文化〉の領域に入る事象については、後世の(また外国の)読者には案外調べがつかず、謎のままで残ってしまうことがままある。この場合も、そんな事柄を知らずともたいてい作品の理解を左右するほどではないのだろうが、一見些末と思えるそうした語が意外に読解の鍵になることもある。それを知らないことが落とし穴になって、肝心な点で読み落としたり読み違えたりすることがありうる。」
(「あとがき」より)


上にあるように、外国の、しかも少し時代を遡っての民衆文化を把握することは素人にはなかなか難しい。
キーワード一つ一つに隠された意味を丹念に埋めていき、作品の理解を深める手助けとすることは文学者の役割の一つだろう。


旅行書ベデガー、観葉植物の葉蘭、風刺漫画のブリンプ大佐などなど、本書にはその手のキーワードが散りばめられており、物語や歴史的背景の読解にも役立つし、それほど気負わなくても小ネタとしても充分楽しめる内容になっている。

普段一緒には語られないオーウェルイーヴリン・ウォー、ワイルドとモリスといった同時代の文人たちの交友関係を知ったのも興味深かった。並べてみると意外にも共通点が多いことに気づかされる。


ラスキンとラファエル前派関連の話は、少し前に観たTVドラマあまりにも楽しかったので、思い出し笑いしながら読んでしまった。(LaLaTVはリンクをはずしちゃったな…どこかに権利を売っちゃったかな)
19世紀末〜20世紀初めの英文学&美術好きなら楽しめること間違いなしであります。