「悪い娘の悪戯」(マリオ・バルガス=リョサ)


図書館にて借出し:


悪い娘の悪戯

悪い娘の悪戯


ああ面白かった!
…と読んだ後に素直に思える作品。ただでさえ恋愛小説が苦手な私、まして粗筋だけ聞くと
DQNカップルのすったもんだって感じで、そういうのこの前かなり堪えたんだよね…とちょっと危惧していたのですが、
さすがバルガス=リョサ、もう続きが気になって気になってノンストップで読了してしまいました。
極楽〜♪


とにかくこの「悪い娘(ニーニャ・マラ)」がハンパなく野心的で痛快痛快。極貧の生まれからか
とにかく自分の欲望に忠実で、お金!良い暮らし!刺激的な毎日!のために自分の性的魅力を武器に
ガンガンのし上がっていきます。目的のためなら偽名・変装なんでもござれ…って、実はあんた
峰不二子なんじゃないの?だって日本人にも化けちゃうんだよ!そのくらい変幻自在。


この悪い娘に振り回されるのが語り手の主人公で、こちらは特別に野心があるでもない真面目な人
(しかし本当にとても良い人なので好感が湧く)なのに、先々で唐突に思わぬ姿で出現する彼女に
「ああまたボクこうやってだまされちゃうんだよな」と心の底では分かっていて、最初は邪険にしても
ついつい誘惑に負けて便宜を図ってしまう…そしてこの好意をこれまた予想通りに踏みつけにして
去っていく悪い娘…くくっ、報われなくて泣ける。もうやめとけ!と何度心の中でつぶやいたことか。
でもやっぱり好きなのよね…。


この2人の恋愛模様もさることながら、主人公と折々に親交を結ぶ友人達がまた人間臭くてとても素敵。
1950年から約40年の間の政治情勢を背景に上手く生かしつつ、その時代を懸命に生きた友人たちの人生を、
脇役とは思えないほどの存在感で伝えてくれます。
彼らと主人公の確かな交流があるから、ベタベタした話にならずに時代を感じさせる内容になっている
のでしょう。そう、やっぱり不二子だけじゃなくて次元や五右衛門が周りに居ないとね!


バルガス=リョサは大作が多いので読むまではちょっとためらうんだけど、読み始めると読了するのが惜しいくらい。
まだまだ未読の作品が多いからこれからも頑張って読もう!楽しみです。