「コロンブスの犬」(管啓次郎)


図書館にて借出し:


コロンブスの犬 (河出文庫)

コロンブスの犬 (河出文庫)


ブラジル旅行記とも随筆とも比較文化論とも言えそうで言い切れない、刺激的で魅惑的な文章。
気に入った箇所をつい引用したくなるのだけれど、どんどん長くなりそうで、それに下手に文章を
切り取ってしまうのが勿体なくてそれも出来ない。
巻末の古川日出男氏の解説がまた秀逸なので、あえてそちらから少々引用させてもらうと:

いったい僕はどんな本を読んだと感じただろうか?一九九〇年代、初めて読んだのは
(もちろん単行本を)明らかに一九九〇年代だった。印象は二十字と少しでまとめられる
もので驚いたことに再読、三読してもそれは変わらない。要するに今回も変わらなかった。
「この『コロンブスの犬』はさようならで始まり、未完成を宣言して完結する」−−−
(略)いきなりさようならという本。そしてこの旅行記は中断されているとおしまいに
告げる旅行記
(P.304、解説「ただともだちの話のあるいくつかは心に残り、他のいくつかは忘れてしまうように」)


こんな風に何とも分類できない本を読むと、自分自身の心境もあちこちに揺れ動いてしまう。
思いつきのままに旅に出たくなってしまったり、友達を呼びつけて無性に他愛ない話を延々
続けたくなってしまったり、はたまた一人で部屋にこもって沈黙の時間をじっと噛みしめて
みたくなったり。


不思議な本。良い本。