「日本語から考える!ドイツ語の表現」(清野智昭/山田敏弘)
図書館にて借出し:
- 作者: 清野智昭,山田敏弘
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2011/04/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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白水社で多々出版されている語学書のうちの一冊ですが、単なる勉強本にしておくにはあまりにも
読んでいて面白かったので紹介させていただきます。
外国語を喋るときにあまり文法を気にするなとは良く言われることで、確かに文法を間違えるのが嫌で
無口になってしまうよりは間違いだらけでもガンガン話した方が良いとは思います。
でも地道に文法を押さえて、この表現はどうなんだろう?どうしてこういう言い方をするんだろう?と
じっくり考えてみるのもそれはそれで面白いし、遠回りに見えても決して損にはならない勉強法です。
一通りドイツ語の文法や用法は覚えたけど、どーも身についた感じがしない…そんな伸び悩み中の
私にはとても良い刺激になりました。
まず作文例として挙げられる日本語例題について丁寧な文法上の解説がついていること、それに対し
ドイツ語の文法はこうだからこうなりますよ、とこれまた親切な説明がされているのが嬉しいです。
普段日本語を喋るときは文法なんて考えてませんが、こうして改めて見直すとやっぱり言葉って
奥が深いな…と思ってしまいます。
しかし!
それ以上に面白いのは一通り文法上の解説をした後で「でも本当はこんなことドイツ人は言わないよ、
だってさ…」という釈明部分。
例えば【彼が来る前から、外に出て待っていた。】という例文。これは現在完了形を使って云々…と
いう解説があったあとで、
なお、この問題文ですが、ドイツ人にとってはどういう状況を表しているか意味不明らしいです。
「外とはどこか?」「なぜ来る前から外で待たなければいけないのか?」と思うとのことです。
私は、彼氏が家に迎えにくることになっているが、待ちきれなくて家の外で待っていたという女心だ、
と説明したのですが、馬鹿馬鹿しいと一蹴されてしまいました。(P.45)
ええー全否定?
もう一例。【彼女は、小鳥のように高い声をしている。】という、比喩表現の例題について、
これによって何が言いたいのかドイツ人にはわからないとドイツ人学生に言われてしまいました。
(略)私は「(略)Vogelstimme(鳥の声)は美しいでしょ?」と言ったのです。そうすると彼らは
「ドイツでは高い声をしているのはeinduetig negativだ。鳥は歌うからpositivだけど、Vogelstimme
自体は別に美しいと思わない」と言うのです。(P.160)
うーんそう来るか。このあと学生たちがドイツ人としての感性で翻訳した文章がまたケッサクで
大笑いしました。ぜひ本書にあたってご確認を。
こんな風に小ネタ満載で読んでいて楽しいということの他に、感心したのは類語の違いをきちんと説明して
くれていること。例えば「とても美味しい」と表現する時にドイツ語では"sehr lecker"とも"köstlich"とも
言えるのですが、
ただしleckerはDieses Gericht sieht lecker aus.「この料理は美味しそうだ」のように、見た目にも使えますが、
köstlichは味にしか使いません。しかも、感動の意味が込められています。(P.155)
そうそう、こういう細かい情報が欲しいんですよ!辞書で単語の意味だけバサッと渡されても使い方が分からない、
これとこれ実際はどう違うのか教えて!という悩みにきちんと応えてくれているのが有難いです。
(もちろん例題の範囲内で、ですが)
この「日本語から考える!」シリーズは他の言語についても多数出ているので、多少文法かじった言語のものは
引き続き読んでみようかな、と考えています。久々に語学熱が再燃しそう。