「息のブランコ」(ヘルタ・ミュラー)

図書館にて借出し:


息のブランコ

息のブランコ


例えば、海外の詩を読むときには原文と訳文(、それにできれば解説)が同時に読めるのが
有難い。どんなに素晴らしい翻訳でも(というか翻訳が素晴らしいほど)原文の響きやリズムを
確かめたいと思ってしまうから。


この作品は一応小説で、しかも厳しい収容所生活を描いているので内容的には痛ましいこと
この上ないのだけど、主人公の思考する言葉が時にグロテスクに、時にはむしろ滑稽なまでに
変容していく過程を追っていくうちに、物語の筋だけではなく原文に内在する響きまで知りたく
なってしまいます。作品に深く関わっていたという、主人公のモデルであり友人であり詩人だった
オスカー・パスティオールの存在も大きいのでしょう。
残念ながら一冊丸ごと原文で読み切るには私の語学力は全く足りないので、ネットの端々で
見受けられる引用と訳文を照らし合わせながら、少しばかりその鱗片を味わうに留めておきます。


感想らしい感想にもなっていませんが、とにかく一人でも多く読んで味わってほしいという思いで
ここに挙げておきます。