ドイツ映画特集(於:東京ドイツ文化会館ホール)その2


2本目に観たのは「若き天才音楽家たち(Wunderkinder)」<ドイツ文化センターの紹介文



舞台は第二次大戦中のウクライナ(当時はソ連支配下)。独ソ不可侵条約により保たれていた
小康状態も1941年にナチスソ連侵攻によって破られ、激しい戦いの渦に巻き込まれていきます。


物語は3人の子供たちとその家族達を中心に進められます。
ソ連/ロシア系ユダヤ人」を代表するのはアブラーシャとラリッサ。この2人は素晴らしい
音楽的才能を備えており、10代初めにしてカーネギーホールでの演奏も夢ではないほどのレベル。
彼らに憧れるハンナは当地でドイツビール醸造所を構える裕福なドイツ人一家の一人娘。
両親の助けもあって彼らと知り合えたハンナは、音楽を通して彼らと深い友情を結ぶのですが…。


歴史の流れを知る人なら、この後アブラーシャ達に降りかかる苦難は容易に想像できるわけですが、
この3人の友情、いかに子供たちが純真とはいえ、ちょっと無理があるんじゃないかなーなんて
思ってしまいました。ユダヤ人の神童2人の結びつきは非常に強くて、彼らより明らかに才能に
劣り出自も全く違うハンナが果たして対等な関係になれるものかしら?これは単に物語の佳境で
ハンナが致命的なヘマをやらかして2人を窮地に陥れるという展開の前振りなのでは…と想像して
勝手にハラハラしてしまいました。こんなこと考える私って汚れた大人なのね(汗)。


ウクライナという地でソ連共産党)からドイツ(ナチス)へと容易に支配関係が逆転していく様が
興味深かったです。最初はソ連側がハンナの一家をスパイと決めつけたためにハンナ一家が隠れ、
ドイツ軍が進駐してきてハンナ一家が解放されたら今度はアブラーシャ達ユダヤ人一族が迫害され…と
両者の立場はあっけなく入れ替っていきます。確かに子供たちからすれば「大人たちって何やってるの?
バカなんじゃないの?」と思ってしまうでしょう。
(しかし両者とも危機に際し醸造所倉庫→猟師小屋と同じ所を隠れ場に選んだのはちと安易では…。
物語の常套としては最初に上手くいった場合、2回目は必ず失敗するんだよー?と、ここでもハラハラ
ドキドキ…まあわかりやすくて良いけど…)


若干分かり易すぎる傾向はありますが、きっちり練られた構成と確かな主張、そして美しい音楽に支えられた
良作だと思います。
アブラーシャ役のElin Kolev君は本物の「神童」とのことで、これから音楽界で有名になっていくのかな?
それもまた楽しみであります。



昨年の映像。うわー顔つきがすっかり大人になってる!


Elin Kolev-works For V

Elin Kolev-works For V

あらCDまで。