ドイツ映画特集(於:東京ドイツ文化会館ホール)その1


公式サイト(ドイツ文化センター)
ドイツ映画祭がここ2年うやむやにされていて、ねーねーまさかこのままなんとなく終わらせちゃう
つもりなんじゃないでしょうね…と疑心暗鬼に囚われていたところへ今回新作映画4本上映のお知らせ。
嬉しいけど、まさかこれで当分お茶を濁すつもりじゃ…とやっぱり疑心暗鬼。
いやいやここは頑張って会場に足を運ぶことが次の企画に繋がる、とは思えど、こんな短期間では
なかなか都合がつきませぬわ!(涙)


それでもなんとか観てきました。まず1本目:


「アルマニヤ ― ドイツへようこそ(Almanya –Willkommen in Deutschland)」<ドイツ文化センターによる紹介



60年代に外国人労働者としてドイツに移住してきたトルコ人一家とその子供たちの歴史を、コメディ
タッチを多分に交えながら描いた作品です。移民問題に関して現在のドイツは必ずしも上手く対処して
いるとは言えず、描きようによっては幾らでも深刻な内容になるところですが、この映画は今の世代の
問題点は敢えてさらっと流しておいて、それよりも過去を振り返りながら家族の絆を再確認することに
重点を置いている印象を受けました。


高度成長期のドイツでは彼ら移民達は貴重な労働力として歓迎されていたわけで、国自体がこれから
伸び盛りで楽観的、という意味で「三丁目の夕日」あたりをちょっと連想しました。決して裕福でも
自由でもなかったけれど、新しい土地で新しい文化に触れる喜びを素直に感じることのできた時代は、
苦労ですら甘い郷愁を込めて振り返ることができます。


一族が揃って故郷へ向かう現代のパートは、小型バス&お茶目な祖父と孫という組合せから
こちらは「リトル・ミス・サンシャイン」を思い出しました。ただし現代アメリカの病める部分が
ハードにてんこ盛りだった「リトル・ミス…」と比べると各々の悩みの描写はあっさり気味。
最後はスローモーションでごまかさずに、しっかりスピーチを決めてほしかったなあ。


と少々辛口になってしまいましたが、これが監督最初の長編映画とは思えないほど上手い!ニクイ!
演出と小ネタで大いに楽しませてもらいました。例えばドイツに帰化しようとする老夫婦に役所の人が
「ドイツに帰化したら週二回は豚肉を食べて日曜夜には刑事ドラマ、夏にはマヨルカ島に行くんですよ!
出来ますか?」と聞いていたのにはウケました。周りのドイツ人観客もゲラゲラ笑ってました。
あと俳優陣、特に祖父役の役者さんは、青年時代の人も現在のお爺ちゃん役の人もどちらも素敵でした。
おまけに私の贔屓のDenis Moschitto君も出てきて嬉しい限り。年取って持ち味のヘタレぽさが
いい感じで熟成されてきたなー、このまま上手い塩梅でくたびれてくれるといいなー、なんて勝手に
妄想したりして…。


映画の最後に引用されていたマックス・フリッシュの言葉は、移民問題を語る際に良く引用されている
ようです:

Wir riefen Arbeitskräfte, und es kamen Menschen.
(労働力を呼んだら、やって来たのは人間だった)


うーんさすがマックス・フリッシュ、簡潔ながらなんとも深い御言葉。そう、人間だから問題も起こせば
様々な交流もある…常にそこに希望を見出せるようになりたいです。