「海の向こうに本を届ける」(栗田明子)


図書館にて借出し:


海の向こうに本を届ける

海の向こうに本を届ける

70年代より、日本の出版物を海外に売り込んできた著者による著作権輸出体験記。
企業もスポーツも続々と世界進出を果たしていますが、日本の本も世界進出しています。
北杜夫さん、有吉佐和子さん、小川洋子さん、星新一さん、よしもとばななさんほか
錚々たる作家の小説、安野光雅さん、五味太郎さんの児童書など、たくさんの本を海外に
紹介してきました。日本文学は海外でどのように受けとめられているのか……。
その橋渡しをするため、世界の出版社を巡り、作家と交流した数々の奮闘と挑戦の記録。
もうひとつの日本文学史・出版史です。(出版社紹介文より)

●「自著を語る(中日新聞インタヴュー)」:http://www.tokyo-np.co.jp/book/jicho/jicho20111206.html


村上春樹よしもとばななといった日本人作家の作品が海外で評価されていることは今では
自明のこととなっているけれど、それでも全世界的に見ればまだまだ限られた数の作品しか
市場に流通していません。そこにはまず言葉の壁があり、それを超えるためには翻訳を含めた
きちんとした著作権管理が必要となってきます。


今でさえさぞ大変だと思えるのだから、70年代からこつこつと道を切り開いてきた著者の苦労は
如何ばかりのものか…と思うと、つくづく頭の下がる思いです。雑誌連載が元になっているため
特に前半は色々と話が飛んで、読んでいて時系列的に混乱するときもありましたが、何もかもが
試行錯誤の連続、失敗を繰り返しながら日本の現代文学の紹介に努めてきた著者の本に対する
熱い想いが存分に伝わってきます。

本を“商品”とせず、人格ならぬ“本格”を大切に、後輩たちがその一筋の道を、さらに
歩み続けていくことを願うばかりです。(P.370)


地道な作業の積み重ねがあってこそ文化は広がるのだということを忘れてはいけない、
そう思える内容でした。