「デスマスク」(岡田温司)


図書館にて借出し:


デスマスク (岩波新書)

デスマスク (岩波新書)

私のものでありながら決して自分では見られない「死顔」を、形に留めるデスマスク
人はいったい何を表現すべくそれを作ってきたのか。
古代ローマの蝋人形から王と教皇の中世を経て、近代の天才崇拝、「名もなきセーヌの娘」まで。
生と死、現実と虚構、聖なるものと呪われたもののあわいに漂う摩訶不思議な世界をたどる。
図版多数。(見返し紹介文より)


この人の手掛けた本はハードカバーだろうが新書だろうが翻訳だろうが全部面白い。
そんな稀有な存在である著者の新作は、崇高さといかがわしさを併せ持つ、死者の顔から
直接写し取られた数々のデスマスクについての興味深い論考。これまた面白いのです。
新書ならではのとっつきやすさと同時に、今後様々な方向に広がっていくべき思考の可能性を
感じさせます。


個人的にはマダム・タッソーに代表される蝋人形とデスマスクとの強い関連性が印象に残りました。
英雄・聖人に対する畏敬のまなざしは、実は見世物に興じる好奇の眼に容易にすり替わってしまう、
そんな危うさを如実に感じさせるエピソードでした。


王の二つの身体〈上〉 (ちくま学芸文庫)

王の二つの身体〈上〉 (ちくま学芸文庫)


王の二つの身体〈下〉 (ちくま学芸文庫)

王の二つの身体〈下〉 (ちくま学芸文庫)


むかし読んだ↑とも深い結びつきあり。文庫化されていたとは不勉強にて知りませんでした。
読み返そうかなあ。


それにしても毎年思うのですが岡田先生、働きすぎじゃないですか?