「聖書を語る」(佐藤優/中村うさぎ)


図書館にて借出し:


聖書を語る―宗教は震災後の日本を救えるか

聖書を語る―宗教は震災後の日本を救えるか


読む前は何とも異な組み合わせ…と思っていましたが、実は中村うさぎ氏も佐藤氏と同じ同志社
(中村氏は文学部、佐藤氏は神学部)、しかも中村氏は中学・高校もキリスト教系ということで
聖書を語る基盤はバッチリ。それでいて俗な部分もしっかりと持ち合わせているから、佐藤氏の
時に難解な理論への突っ込みも絶妙。対談って双方の共通項と相違点のバランス次第で面白くも
つまらなくもなるものだけど、この点については成功しているのではないかと思います。


佐藤氏が中村氏の作品を称賛しているのは彼のこれまでの著作から知ってはいたのですが、今回
その理由を彼は「プロローグ」で次のように述べています:

うさぎさんの作品を読むうちに、この人はキリスト教、それもピューリタニズム(清い生活を
重視するプロテスタンティズムの一潮流)の影響を強く受けていると直観した(この直観は
正しかった)。それは、うさぎさんが遍歴したブランド品漁り、美容整形、ホストクラブ通い、
デリヘル嬢体験などのすべてが、ピューリタニズムの倫理で厳しく禁止されている事柄だからだ。
人間は弱いので、浪費、飲酒、セックスを楽しむとそこから抜け出すことができなくなり、人間と
しての存在基盤が根底から崩されてしまう危険があるので、キリスト教がこれらの誘惑から
人間を遠ざけようとする。しかし、うさぎさんはどのような経験をしても崩れない。私の見立てでは、
さまざまな経験を通じて、うさぎさんは人間の内側と外側を区別する輪郭を確認しようとしている
のだ。この輪郭において、人間は神に触れることができるのである。(P.9)


うーんいつもそんな風に読んでいるのかまさるくん。この人もやっぱり面白い人です。


そんな二人が聖書の教義から、宗教が現代文学に与えている影響、そして震災後に日本人の
宗教観がどう変わったか、変わっていくかなどについて語り合います。2人ともキリスト教
深く関わっていてもそれで思考停止に陥ってしまうタイプではないので、胡散臭い感じにならず
ニュートラルに深い議論を楽しめるのがありがたいです。とても刺激的な内容でした。



ロシア闇と魂の国家 (文春新書 623)

ロシア闇と魂の国家 (文春新書 623)

こちらはロシアを巡る濃ゆーい対談でした。まさるくんやはり面白し。
●読んだ時の感想:http://d.hatena.ne.jp/shippopo/20080430


これは読むと妙な元気がモリモリ湧いてくる(笑)ので、今でもつい読み返しちゃいます。
マツコ・デラックスを初めて知ったのはこの本でした。まさか今こんなにメジャーになるとは…。