「新しい人生」(オルハン・パムク)


図書館にて借出し:


新しい人生

新しい人生


ある瞬間に、それまでの自分が経験してきた事の意味が突然すべて置き換わってしまうような、
体内の遺伝子が組み変わって全く違う自分に成り代わってしまうような、そんな根源的な体験を
実感した事があるのなら、この本を理解することはさほど困難ではないような気がします。


それを引き起こすきっかけとなるのは、例えば「一冊の本」だったり、「運命の人」だったり、
あるいは異文化との接触であったり。パムクのこの小説は、そんな衝動的な体験を多層的に
描いているように思えました。もっと時間があったらじっくりと考察してみたい内容です。


作中に頻出する「天使」への呼びかけ。イスラム教の天使について私はほとんど知識がありませんが、
読んでいて思い起こしたのはW・ヴェンダースの映画「ベルリン・天使の詩」で人間をそっと見守る天使たち。
まあ実際には関係ないのだとは思いますが…:


↑事故を止めることはできない、傷を直すこともできない、ただ傍らに寄り添う無力で、そして優しい天使。