「アイルランド・ストーリーズ」(ウィリアム・トレヴァー)


図書館にて借出し:


アイルランド・ストーリーズ

アイルランド・ストーリーズ


「聖母の贈り物」が出版された当時と比べると、今や日本でもしっかり名匠としての地位を確立した(大げさ?)W・トレヴァー。
国書刊行会からの第二弾は、題名どおりアイルランドらしさを前面に出した短編が選りすぐりで収録されています。


上手いのは勿論、そこに埋め込まれた苦みに読んでいてのたうち回りたくなりました。
因襲に縛られ、抑圧され、紛争で多くの血を流したアイルランドの人々。何も知らない人がこれだけ読んだら
なんて恐ろしい国だ!と思ってしまうのでは。(ホラーぎりぎり、みたいな心理小説もあるし)
実際のアイルランドは、少なくとも旅行者には美しくて心なごむ国ですが、その底にこれらの小説に描かれる
痛みがあることを改めて噛み締めました。でも私にとっては一層愛おしい国、です。