「夜と灯りと」(クレメンス・マイヤー)


図書館にて借出し:


夜と灯りと (新潮クレスト・ブックス)

夜と灯りと (新潮クレスト・ブックス)


どこかで聞いた名前だと思ったら何のことはない、2年前にこのブログで自分自身が言及しておりました(忘)。
この頃は日本語版が出るとまでは期待してなかったんですが、新人で原本から2年で翻訳されるなら立派立派。


旧東ドイツの「負け犬」として生きる人々…みたいな紹介をされているので「旧東独蟹工船」みたいな悲惨な話だったら
どうしよう?と怖々読み始めたのですが、確かに人生あんまりツイてない、上手くいってない人達の物語ではありますが、
今の日本なら充分日常的にありえそうな状況ばかり。それでも書きようによってはぐちゃぐちゃに暗くなりそうですが、
一人一人の心の揺れを抑えた筆致で描き出している著者の手腕は新人離れしていて、とても好感を持ちました。


南米でウマくやっているらしい友人の手紙を待ちわびる男、失業中に愛犬の手術のために大金が必要となって俄か競馬を
学び始める男、夜中に大型スーパーでフォークリフトを運転する男のささやかな交友とその終わり…
冴えなくてもその日その日をなんとか生きていこうとする人たちがなんとも切なく愛おしく感じられる作品集でした。