「Brooklyn」(コルム・トビーン)


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Brooklyn

Brooklyn


以前読んだ同著者の「The Master」がとても良かったし、とにかくアイルランド移民の話なので絶対これは近々に
読もう!と思っていたものです。


筋書的には全く奇をてらわない王道路線と言いますか、1950年代、まともな職もないアイルランドの小さな町から
アメリカで働くために単身海を渡った少女Eilis(アイリスと発音するのかな?)の成長物語です。
NHK朝の連ドラにでもなりそうなノスタルジックな頑張るヒロインもの、って本来はそんなに好きじゃないんですが
一気に読んでしまったのは、当時のNYの熱気や移民コミュニティの在り方などがさりげなくも深く描かれているし、
出てくる女性達それぞれの心理描写があまりにも的確で、著者が男性だというのが信じられないくらいです(まあゲイですが…)。
下宿内でのイケてる系と冴えない系女子の2つのグループによる諍いの場面なんて、なんでそれ知ってるの?というくらい
「勝手に派閥を作って、入らない子はシカトする」みたいな、ささやかに意地悪な女性心理をさらっと鋭く突いてきます。


どっちの派閥ともしっくり行かず中途半端なポジションのヒロインは別の活路を新たに見出し、そこから物語も大きく動いて
いきます。後半ある事情で彼女は一度アイルランドに戻るのですが、故郷を離れた約2年の間に自分が変わっていたことに
気づかざるを得なくなります。あれほど恋しかった故郷なのに、もうここに居るわけにはいかない…痛みと苦みを伴って
彼女はそのことを認識するのです。


英語の本を読むのは久々でしたが、読みやすい文章にも助けられてワクワク読了できました。こういうのを読むと未訳本も
きちんとフォローしないと駄目だな、と気合が入ります。持続できるように頑張らないと。