「ヴォルガ・ドイツ人」(アルカージー・ゲルマン、イーゴリ・プレーヴェ)


図書館にて借出し:


ヴォルガ・ドイツ人―知られざるロシアの歴史

ヴォルガ・ドイツ人―知られざるロシアの歴史


ドイツの移民関連を調べているうちにこの本に行き当たりました。
先に↓の2冊を読んでいたのですが、取り上げているテーマ自体は大変興味深いものの、やや著者の主観が
前面に出すぎているような気がして、もう少し客観的な内容のものを読みたいと思っていたのでした:


東方のドイツ人たち―二つの世紀を生きたドイツ人たちの証言集

東方のドイツ人たち―二つの世紀を生きたドイツ人たちの証言集

ドイツ・右翼の系譜―21世紀、新たな民族主義の足音

ドイツ・右翼の系譜―21世紀、新たな民族主義の足音


こちらの方は逆に資料的価値は高い一方で読み物としての面白さには若干欠けている面がありますが、短期間とはいえ
ソ連時代に自治共和国を作るほどの規模でドイツ人が移住していたということすら知らなかった私にはとても勉強に
なりました。特に第一次大戦以降はソ連中央政府自体が混乱の極みにあったため、移民政策も二転三転、更に
第二次大戦では「ファシスト」対「共産主義」というイデオロギー闘争に巻き込まれ、ドイツ系移民は悲惨な境遇に
追い込まれていきます。戦争中はどの民族に限らず移民は弱者として酷い仕打ちを受けるものですが、具体的な数値で
被害を確認するとやはり胸が痛みました。


大戦中に自治共和国住人は四方へ分散移住させられ、戦後も元の地に戻れない状態で、「ヴォルガ・ドイツ」という集団は
そのうち消滅してしまうだろう、と著者達は述べています。その歴史だけでも消滅させないように記された本書は貴重な
記録となることでしょう。



●「民族ドイツ人という存在(はてなダイヤリー「ビジネスから1000000光年」)」:
http://d.hatena.ne.jp/y_arim/20091108

↑よくまとまっていて読みやすかったです。