ドイツ映画祭2009 その1


●公式サイト:http://www.germanfilmfest.jp/


今年もやってきましたこの季節。気合満々で15、16日に会場・バルト9に参上いたしました。


「ブッデンブローク家の人々」 Buddenbrooks 10月15日(木) 11:00-
なんと満員御礼。客層は60歳代以上の方が圧倒的に多く、このくらいの世代にとってドイツ文学、なかでも
トーマス・マンは特別な作家なのであろうと想像できました。
(ちなみに2回目の上映(16日)も満席だったようです。恐るべしマンパワー!)



私は10代のころ北杜夫の小説が好きだったのですが、彼は非常にマンに心酔している人で(ペンネームも初めは
「杜二夫」=トニオ(・クレーゲル)だったとか)、長編「楡家の人びと」もこの小説の影響を受けて書かれたものなのでした。
うーん、そう思うとなんだか密かにここまで導かれている気分。


楡家の人びと (上巻) (新潮文庫)  楡家の人びと (下巻) (新潮文庫)


原作は未読なのですが、映画は2時間半の長さを感じさせない面白さでした。不謹慎な言い方が許されるのならば、
名家が緩慢に没落していく話って大抵面白いですよね。没落といっても一般基準から見ればまだまだ優雅だし、
緩慢だからものすごい修羅場があるでもなく、ゆったりと悲劇に身を任せられるわけで…。
大企業が時代と運に見放されて倒産の憂き目にあう、という展開も現代では他人事ではなく、その点からも
興味深く観ることができました。
でも原作ファンは多分「はしょりすぎ!」と思うことでしょう。私も原作を読んでからもう一度観直したいです。


俳優陣でややお気に入りのアウグスト・ディール君は、今回繊細さをケーハクさで包んだ次男坊を好演していました。
初老時のメイクがとても自然で「えっアウグスト君こんなに老けちゃった?ヤバくない?」とつい心配してしまいました。
(おでこが年々広がっていくのは本気で心配した方が良いかもしれません…)私の勝手な予想ですが、彼はこれから
クリストファー・ウォーケン路線に進むと良いのではないでしょうか。(ウォーケンだって今はトンデモ怪優ですが、
昔は繊細な「クリス様」だったのよ…)独特のエキセントリックな雰囲気が似ている気がします。なんか二枚目役は
もうそろそろ無理な気がしてきました…。


それより長男役のマルク・ヴァシュケ(Mark Waschke)が一見地味ですがよく見るとなかなかイイ男。高貴なライオンのような
整った顔立ちです。まださほど映画には出ていないようですが、今後の出演作品をちゃんとチェックしておかねば。
ヒロインは、うーん、まあ現代的な気性の女性という位置づけだからこれで良いのか、な?個人的にはビミョー。
(というかドイツの「美人」女優って、大抵ビミョー…)



「SOUL KITCHEN」Soul Kitchen 10月15日(木) 17:00-
ご贔屓ファティ・アキン監督の最新作は、故郷ハンブルクへの愛情がたっぷりつまったパワフルなコメディ。
本国ドイツに先駆けて日本で先行上映!これは嬉しーい♪



(正式な予告編はまだ出来てないようです…)


前作が割と静かな作品だったのでちょっと油断していましたが、このエネルギーのかたまり、多文化ごった煮の
良い意味で雑然とした雰囲気もまたこの監督の持ち味だと再確認しました。多少お下品なところもありますが
総じて面白かった!です。
舞台となるレストランの、冒頭での超いーかげんな調理描写と、それでもそこそこ客がついてる辺りがさすがに
ドイツだなーと思ってしまいました。


弟役のモーリッツ・ブライプトロイは、何故か私が観る映画の中ではいつもいつも底抜けのダメ男役。
今回もかなーりダメダメで笑えました。実は本当にだめんずなんじゃないかと疑っちゃうくらいでしたよ。