ディスカッション「ドイツと日本の文学賞」(於:東京ドイツ文化センター)


たまたま見つけて興味を持ったので行ってみました:


催し物カレンダー「ドイツと日本の文学賞」ディスカッションゲーテ・インスティトゥートのサイトより)


上記↑の説明にもあるように、主な比較対象はドイツ書籍賞(Deutscher Buchpreis)と芥川賞
現在のドイツ書籍賞は、まあ簡単に言えば「ブッカー賞のドイツ語版」で、その年出版されたドイツ語作品から最も優れた作品を
選ぶというのが目的。選考方法もブッカー賞のものをほぼ踏襲しており、各出版社からの推薦本+個人推薦による160冊前後の本から
longlist(20冊前後)、shortlist(5−6冊くらい)という候補作の絞込みののち受賞作を決定。授賞式をフランクフルト・ブックフェアに
合わせている事もあって海外を含めたメディアの注目度も高く、商業的にもかなり成功している賞といえます。
ちなみに審査委員は毎年入れ替わるとの事。


芥川賞とは随分毛色の異なる賞なので果たしてちゃんとした比較になるのかしらんと思っていましたが、司会の方の仕切りが上手い事もあって
なかなか面白い内容となりました。


一番の違いは主催者と選考委員。日本の文学賞は出版社主催のものが大半ですがドイツでは珍しい。また選考委員が現役作家で、しかも
ずっと同じというのも芥川賞の特色であることは以前からワイワイ言われている通り。主催者側からの言い分によると文藝春秋主催だからといって、
雑誌「文学界」掲載の作品が優位に立つことはない、候補作を挙げる時点で「文学界」掲載作品はあえて半数以下に絞っているので、
場合によっては(つまり「文学界」作品が多数豊作だった場合も数を制限しているので)不利に働いているかもしれない、とのこと(そう?)。
また選考委員に候補作品を読んでもらう際には、独自の小冊子を作って渡しているので掲載誌を意識した選考にはなってないはずだ、との
ことでした。


また「生涯」選考委員についても、候補者の成長を見届けることが出来るのが長所であるとのこと。例えば今回受賞した楊逸氏の作品も
前回の候補作品と比べて日本語の表現能力が著しく進化したことが確認できたのは、選考委員が同じであったからこそ、との話。
これに対してドイツ側の意見は「作家はもともと同業者の作品はあまり読みたがらないし謝礼も少ないので委員になりたがらない。
作家同士や評論家との間の交友関係(悪く言えば癒着?)が評価に反映されるのが懸念されるので不信感を除くためにも毎回審査員を
入れ替える必要があった」とのこと。信頼感をどこに置くか、が違いを生むのでしょうか。


日独双方の授賞式の様子やインタヴューを映した映像なども見せてもらって楽しかったです。会場はドイツ文化センターの図書館でしたが
ドイツ書籍賞のshortlistに選ばれた6作の単行本は勿論、各作品の粗筋等を日本語で書いた販促用レジュメが用意されていました。この中で
何作が日本語に翻訳されるのか?楽しみでもあり不安でもあり…。


ディスカッションの後はレセプションもあり、ワインなども用意されていたのですが私は時間がなくてそのまま直帰。うー惜しかった…。