「オオカミ少女はいなかった」(鈴木光太郎)


図書館にて借出し:


オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険

オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険


幼少期にオオカミに育てられたカマラとアマラという名の少女のお話は、子供のころ学習漫画で読んで「へーそんなことも
あるんだあ」と感心した記憶があります。それから特に思い返すでもなく(勿論疑問に思うでもなく)今日に至っていたわけですが
この本によると、少女達は実在していたにせよオオカミに育てられたという具体的な証拠は存在しないのだとか。えっそうなの?


他にも「映画上映中にサブリミナル映像を観せたらポップコーンの売上が上がった」「母親が子供を左胸に抱くのは心音を聞かせて
安心させるため」「離して育てられた双子なのに、ン十年ぶりに再会してみたら奥さんと子供の名前が一緒だった」などなど、
一度は聞いたことがあるような逸話が、実際には全く不確かな実験を元に導かれた結論であったり、更には全くの捏造だったりすると
いった内容が次々に挙げられていきます。


ちょっと原典に当たればすぐ分かる(と著者は言っている)事なのに、この手の「神話」が消滅せず心理学の教科書にさえもずっと
掲載されている事実について、著者は資料の孫引きで誤魔化そうとする研究者の怠慢、刺激的で分かりやすいお話を求めるマスメディアの
罪を非難しています。この辺は心理学に限らず全ての学問に当てはまりそうです。(著者は折にふれ心理学につきまとう胡散臭さに
ついて言及していますが、私には特に心理学「だけ」が胡散臭いという意識はないんですけどね…)


じゃあこの本の内容を鵜呑みにする(自分で原典に当たらない)のもある意味危険じゃないのか、という気もするので今は全面的に
信用しないでおきますが、それでも今まで事実だと思っていた事が次々ひっくり返されていくのは倒錯的な快感(?)。
都市伝説ネタとか好きな人にも面白く読めると思います。