「What We Are Made of (Woraus Wir Gemacht Sind)」(トーマス・ヘッチェ)


紀伊国屋書店新宿南館で購入。なんだかんだいって洋書はここが一番充実してます。
他の書店に比べると、英語以外の言語の書籍がまだ揃っている方です(物足りないけど):


What We Are Made of

What We Are Made of

(PB:0330452083)

オリジナルはドイツ語で、2006年の Deutscher Buchpreis(ドイツ書籍賞)のshortlistに選出されました。


Woraus wir gemacht sind

Woraus wir gemacht sind


伝記作家の二クラスは、戦時中ドイツからアメリカに移住したあるユダヤ人夫婦の人生を伝記にまとめて出版したばかりだった。
英語版翻訳の話を受けNYに招かれた二クラスだったが、同行した身重の妻・リズが誘拐される。どうやら彼が伝記を書いた
ユダヤ人には何か秘密があり、その証拠を二クラスが持っているのではないかと疑われたのだ。全く心当たりの無いまま、
その「証拠」を捜し求めるニクラスだったが…。


物語は9.11のちょうど一年後のNY(イラク侵攻への気運が高まっている頃)に設定されており、米国のためらいのない暴力性が
随所に描かれています。対する欧州代表選手?の二クラスはよくローマの夢を見たりするのですが(フロイトみたい)、
こちらは歴史の重みに潰されているようで全く機敏に対処できない人。
旧世界と新世界の邂逅と対立がテーマの一つになっているとは思うのですが、普通のスリラーとしてさらっと読み流すべきかも。


大体このニクラス君、奥さんがさらわれたのにそんな悠長な態度でどうするよ?ともどかしくなるような展開が続くのですが、
筋書きを追うよりも、ここはやはりデヴィッド・リンチ的な不条理な悪夢を堪能すべしということなのでしょう
マルホランド・ドライブまで出てくるのは著者のサービスのような)。私の好みでは無かったですが、それなりに楽しみました。



さて今年もフランクフルト・ブックフェア開催に合わせる形でDeutscher Buchpreisが来月発表されます。
以前にも書きましたが、ブッカー賞スタイルへの変更は対外アピールとしてはやはり吉と出たようで、
2006年のshortlist選出作は英訳がほぼ出揃った感じ、2007年受賞作"Die Mittagsfrau"は日本だと既に河出書房からの出版が
決まっている模様。というわけで今年の候補作も要チェック!なのであります。


●Deutscher Buchpreis 公式サイト:http://www.deutscher-buchpreis.de/de/177061(独・英・仏語)