「反知性の帝国」(巽孝之:編)


図書館にて借出し:


反知性の帝国

反知性の帝国


元ネタはこちら↓


アメリカの反知性主義

アメリカの反知性主義

中村宗悦氏による内容紹介・書評
(↑反知性主義についての的確な要約にもなっていると思います)


日本語版翻訳は2003年だが原書はマッカーシズムがようやく終焉に向かった1963年、と40年の開きがある。
原書出版当時の意義の確認や、当時著者が誤認していた事の現代的視点からの修正、さらにはブッシュ政権の現代に
改めて反知性主義を見直す意義などが盛り込まれているので、ホフスタッター未読の私にも非常に読みやすかった。


特に第三章は非常にわかりやすい原書の要約(米国で出版当時に読んだ人ならではの臨場感が抜群!)に加えて
その限界点・問題点も指摘されており大変面白かった。素人はホフスタッターよりまずこの本のこの章から読むほうが
理解しやすいと思う。


ただ、アメリカ文学への応用は少々厳しいような印象も受けた。反知性主義自体は割と普遍的な思想だし、
優れた作家は常に「知」と「情」の狭間で葛藤していていたのではないか?と考えると、米国文学に限らずとも
古今東西どの小説も反知性主義と関連づけて解釈しようと思えばできるのではないか?という気がした。
どうせならもっとエンタメ寄りの作品を選んで、社会学的アプローチも含めて分析した方が成果が上がりそうな
気がする。


とはいえ非常に充実した内容。前述の第三章の他にも、ブッシュ政権vsマイケル・ムーアの戦いを反知性主義
視点から説き起こした第一章、明治以降の日本と比較する第七章に特に興味を惹かれた。アメリカを知る上で
大きな武器になりそうな一冊。





グロテスクな教養 (ちくま新書(539))

グロテスクな教養 (ちくま新書(539))


日本だと反教養主義・反学歴主義になるんだろうか?とも考えたりして。