「巨匠とマルガリータ」(ミハイル・A・ブルガーコフ)

図書館にて借出し:


巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)

巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)


著者はソ連政府から弾圧を受けていた人で、この作品も生前は陽の目を見なかった、という話くらいは
聞いていたので、さぞや深刻で陰鬱な物語なのだろうと思っていたら、次々と繰り広げられる祝祭的時空間に
度肝を抜かれっぱなし。ええっこんなにハチャメチャ楽しくて良いんですかー?しかも読んでも読んでも
巨匠もマルガリータも出てこない(前半三分の一くらいでようやく巨匠登場、しかも全然「巨匠」ぽくない)
ので、ひょっとして間違えて別の作品を読んでいるんじゃないかと不安になってきました。


しかし読了してみると、巨匠の書いたピラトゥス(ピラト)とヨシュア(イエス)の物語が全体を引き締めて
色々な深読みが可能な多層的小説になっているのに感服。じーっと息を潜めるようにしながらこんな話を
書いていたのか…と思うと気が遠くなりそうです。単純な政府批判なんて飛び越えた次元で戦っているという
印象を強く受けました。