「The Gathering」(アン・エンライト)


2007年ブッカー賞受賞作。あらすじを漏れ聞いた時点で多分私好みじゃないなあとは思ったけれど、
アイルランド作家は原則ひいきする主義なので一応読んでみました。でもうーんやっぱり厳しかった:


The Gathering

The Gathering


一つ上の兄の死と葬儀を中心にヒロインの心情が描かれていくのだが、最初の方で兄弟姉妹は彼女も入れて12人
(うち数名は既に故人)、しかもその他に母親は7回も流産していたと明かされる。
実際母親は産むだけでヘロヘロ、育てるなんてとてもとても…みたいな状態で、兄弟姉妹がお互い面倒を見合って
なんとか大きくなった、という感じ。そのせいかヒロインも含めて皆精神的にちょっと不安定な印象を受ける。


19回妊娠…この設定だけで私なんかゲッソリしてしまう上に、実は兄の死には祖母の時代からの因縁が尾を引いていて、
みたいな展開が加わってとても息苦しい家族小説。後半かなりすっ飛ばして読んでしまいました。


アイルランドはとても好きな国で、旅行中嫌な思いをしたこともほとんど無かったけれど、他人にも惜しげなく与えられる
ホスピタリティが身内に向かうと結構しんどい事もあるだろうなあとは容易に想像できる。
潜在するカトリックの縛り(子沢山なのもそのせい)がこの息苦しさに拍車をかけているだろうことも。その意味でとても
アイルランド的な作品のように感じられました。



幸せを運ぶ料理店〈上〉 (扶桑社ロマンス)

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幸せを運ぶ料理店〈下〉 (扶桑社ロマンス)

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「ハッピーエンドの女王」としてアイルランドでは勿論欧米で人気が高いメイヴ・ビンチーも、決してハッピーなことばかり
書いているわけじゃなくて、上記のような問題点をさりげなく提起しつつ、それでもポジティヴに人生を捉えようと頑張っている、
その登場人物達がとても愛おしく感じられるわけでして。一見全然別物のようで、実は同じテーマの裏表という気がします。



マグダレンの祈り [DVD]

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アイルランドカトリックの暗部を暴露して話題になった映画ですが、教会の保護によって救われる人も多いわけだから、
これもやっぱり裏と表があるってことで。若者の宗教離れが進んでも潜在的にはまだまだ縛りはきつそう。