「めぐらし屋」(堀江敏幸)


図書館にて借出し:

めぐらし屋

めぐらし屋


父の遺品を整理していた蕗子さんは、父がひっそりと「めぐらし屋」という仕事をしていたのを知る。
一体どんな仕事なのか、それを確かめていくうちに段々と見えてきたのは今まで知らなかった父の横顔や
交友関係。そして忘れかけていた家族の懐かしい思い出が、蕗子さんの内に段々蘇ってくる。


「蕗子さん」なんて主人公の名づけ方から川上弘美っぽい内容を予想していたけど、実際かなり近い感じ。
(ただし恋愛度数は3%くらい)。新聞の日曜版連載ということで、普段よりもちょっと柔らかめの印象。
確かにこんなのが毎週日曜に読めるんだったら、新聞が届くのが待ち遠しくなりそう。


相変わらず端正な文章で、良い日本語を読んでいる、という気持ちになる。
「天津甘栗」を「天使の蛤」(p.34)と聞き違えたり、「麩が醗酵したらきっとこんな音を出すにちがいないという、
くふくふとまるみのある笑い方」(p.72)なんて絶妙な言い回しが楽しめるのはいつもの事ながら、
今回お勉強になったのは以下のくだり:

(…)ひろげてみようとして、自分の傘とはずいぶん勝手がちがうことに気づかされたのである。はじきを押すとろくろの部分がするする柄をのぼり、受け骨がボッというこもった音を立てて一瞬のうちに広がる自動傘ではなかったのだ。生地が張り切ってろくろが上はじきにカチッと止まるまで、手でずっと押しあげてやらなければならない。(p.8)


「はじき」「ろくろ」「受け骨」「上はじき」…傘の部分にそんな名前がついてるなんて考えたこともなかった。
もう軽々しく「ジャンプ傘」とか言いたくない気分。それとも私が無知なだけなのかなあ(不安)。




古道具 中野商店

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恋愛度数をやや高めると、この辺↑に近くなるのでは。どなたか試してみてください。