「琥珀捕り」(キアラン・カーソン)


図書館にて借出し。以前からチェックはしていたのだけど、先日のイベントの予習も兼ねて。
近所の図書館はハコ自体は小さいのだけど、区内10箇所の図書館とデータベースを共有しているので
ネット上で検索・予約が可能。話題作でなければ下手に書店で探し回るよりずっと早く手元に届きます:


琥珀捕り (海外文学セレクション)

琥珀捕り (海外文学セレクション)


そのイベントで柴田元幸氏が絶賛されていたけれど、とにかく文章が美しい。著者は元々詩人なので
原文もさぞ美しいのだろうなあ、と想像できる。かといって詩にありがちな難解な抽象性は無く、
沢山の楽しいお話がこぼれんばかりに詰め込まれている。
一応琥珀を巡る物語、のはずなのだけれど、どんどん話が脱線して、それがまたそれぞれに面白いので
すっかり忘れて読みふけっているうちに唐突にまた琥珀の話に戻ってくる、その広がり加減がなんとも痛快。


本文中で何度も言及されるのはフェルメールを始めとするオランダ絵画で、その詳細な描写へのこだわりは
確かに共通するものを感じるけれど、全体の構成で想起させられるのは、やはり「ケルズの書」を代表する
うねうねとダイナミックに描かれたケルト文様。見ているうちに全体を忘れ、微細な「部分」に吸い込まれて
しまうような錯覚。それも含めてとってもアイルランド、な一冊でした。



ケルト 装飾的思考

ケルト 装飾的思考

(文庫版:asin:4480080945

「ケルズの書」とアイルランド文学との関連性を知るのに最適の一冊。
改めて表紙になっている「ケルズの書」を見ると、おお!琥珀色に見える。



ラスト・ワールド

ラスト・ワールド

全体のモチーフとなっているオウィディウス「変身物語」をドイツ人が変換するとこうなる、という一例。
私の感想はこちら。この辺の古典はやはり西欧人には常識なのかな。