「The Swarm」 (フランク・シェッツィング)


古本市にて購入。活字が小さいもので目をショボショボさせながら読了:


The Swarm: A Novel of the Deep

The Swarm: A Novel of the Deep



原作はドイツ語圏で200万部以上のベストセラー:

Der Schwarm

Der Schwarm


ある時を境に突然増発する海難事故、イルカやクジラの凶暴化、強い毒性を持つ海洋生物の相次ぐ発見…
世界中の科学者達がそれぞれの分野で原因を究明しようと躍起になるが、それを嘲笑うかのように悲惨な事故が
次々と人間を襲う。それはまるで「海」そのものが激しい敵意を持って動いているかのようで…。


いやー怖かったデス!とにかく次から次へと事件が起こるので、こりゃもう全然勝ち目ないよ!とドキドキしながら読んでました。
大勢出てくる科学者達も皆キャラが立っているし、科学的説明の部分とアクション場面の切換も上手いので、
膨大なボリュームでも飽きることなく集中できました。あまりこの手のエンタメは読まないんだけど、
確かにこれはドイツ人だけに読ませておくのは勿体ない!と思っちゃいました。
環境問題に密接に絡んでいるのもポイントが高いです。


ただ最終章まで読むとやはり欧米人には「一神教→神の似姿としての人間(の優位性)」という呪縛から逃れるのが
今でもやはり難しいんだなと実感しました。著者はそういった人類の優越感をぶち壊すために、あれやこれやと
手を変え品を変えて読者を挑発するわけですが、日本人からすると「何を今さら?」と感じる部分もありました。
作中ではアメリカ原住民の血を継ぐ Anawakと Greywolfがアニミズム思想を代弁する形になっています。


あと、最後の「作戦」は実際どのくらい有効なものなのかな…なんか一年も時間稼ぎできない気がするんだけど。


一応ハリウッドで映画化が進んでいるそうですが、これまともに作ったらすんごくお金が掛かるだろうな…。
きっちり作れば面白いとは思うけど、とにかく長いからアクション中心でに編集されちゃいそうでコワい。
著者も映画化には(多分)初めからかなり意識的で、作中にも「それって『アビス』っぽくない?」とか
「こりゃヒッチコックの『鳥』の深海バージョンだね」とか「私の役は『コンタクト』で言えばジョディ・フォスターね」とか
言われそうな部分に自分で先手を打ってツッコんでるところが可笑しい。もちろん似てるけど違うんだよ、という自信があるんでしょうが。
そういえばドイツものには珍しく会話が軽妙で、ニヤニヤさせられる部分も多かったです。それも読みやすさの一因かな。
まあ映画が無事に完成すれば日本語版も出ると思うので、期待して待ちましょう。



Nachrichten aus einem unbekannten Universum: Eine Zeitreise durch die Meere

Nachrichten aus einem unbekannten Universum: Eine Zeitreise durch die Meere


この小説を書く際に色々調べた内容を元に著者が再構成した、海洋に関するノンフィクション。
実際、小説内でも様々な分野が詳細に語られているので、読了後はすごく頭が良くなった気がしました。
これも副読本として読んだら一層理解が深まりそう。