「食べる西洋美術史」(宮下規久朗)


非常に刺激的で充実した内容の新書でした:

食べる西洋美術史 「最後の晩餐」から読む (光文社新書)

食べる西洋美術史 「最後の晩餐」から読む (光文社新書)

多くの宗教では、神の姿は目に見えず、表現できないことになっていた。しかしキリストは人間の姿をまとって、つまり受肉して人間世界に出現したため、これを記録し、表現することが理屈上は可能となった。
(略)
つまり、キリストが受肉したことにより、現世の肉体と食物を肯定し、造形表現を肯定する道が拓かれたのである。食物や造形表現としう、ややもすると肉の滅びや偶像につながる物質を、聖餐という儀礼と聖像という表現に昇華しえた、そこにキリスト教文明の特質があったのである。食物を描いた美術がかくも多いのはそれゆえだったのではなかろうか。(p.248-249)


これまで西洋絵画とキリスト教に関する本は幾つか読んでいたけれど、「食」というキーワードを加えることで
これほど奥行きのある考察が展開できるとは。新鮮でした。


更に感心したのは宗教画から段々人々の関心が風俗画へ移行していく過程も丁寧に追っていること。
一見繋がりがないように思える現代美術も、きちんと文脈を辿れば過去の名作の流れを踏襲していることが
納得できる説明になっています。
分量は少ないけれど、これら異文化が日本でどう受容されていったかも示されていて、これがまた面白かった。


美術、宗教に関心のある人、そして何よりも食べることが好きな人は読んで損はない内容だと思います。





絵画で読む聖書 (新潮文庫)

絵画で読む聖書 (新潮文庫)


ちょっとクセや偏りはあるけれど、読んで楽しい西洋美術本ってやっぱりこれかしらん。



BRUTUS (ブルータス) 2007年 4/15号 [雑誌]

BRUTUS (ブルータス) 2007年 4/15号 [雑誌]

こちらは入門編。オールカラーはやっぱり見やすくて良いです。