「アレクサンドリア四重奏(1)ジュスティーヌ」(ロレンス・ダレル)


名作だ!復刊だ!の掛け声に押されて購入。いやずっと待ち望んではいたんですけど。


アレクサンドリア四重奏 1 ジュスティーヌ

アレクサンドリア四重奏 1 ジュスティーヌ


表題にもなっているこのジュスティーヌがいわゆる魔性の女というか、なぜか男たちがことごとく
メロメロになっちゃうタイプの女性なので、読み始めた当初は
「うわーこれってこのままドン詰まった男女関係がずっとメインの話なの?」
とお子ちゃまの私は危機感を覚えていたのですが、読み進めるうちにその辺はあまり気にならなくなりました。


理由はその特異な描写力。具体的でも抽象的でもないのに光や匂い、色彩などの強烈な印象が残るような。
パウル・クレーチュニジアを描いた絵を思い出しました。原語で読んだら(すごく読みにくそうだけど)
もっと激しく感じるかも。


あと、メインの恋愛以外で絡んでくる人物の個性の濃さ。様々なエピソードが次第にある人物像を浮かび上がらせる
その面白さ。今のところ一番好きなのは理性的なクレアかな。最終巻は彼女が表題になっているので楽しみです。


全4巻読まないと全体の構成が理解できないらしいので、とりあえず今は読み進めるのみ。
でもこの1巻だけでも、初読時と現在再読中の今ではかなり理解度が異なるのが自分でも分かります。
なにせ語り手は思いつくまま語っているので最初のうちは誰が何やら良く分からなかったのです。
とにかく読み通せ!読み通したらもう一度読め!という作者の罠にまんまと嵌っているのかもなあ…。


【参考】池澤夏樹氏による書評(毎日新聞):
    http://hondana.mainichi.co.jp/2007/03/post_eab7.html
    そうか、これを読んでアレクサンドリアに行くと騙されるのね…。



アレクサンドリアの風

アレクサンドリアの風

じゃあこれは↑騙されて行った人の例?




海図と航海日誌 (SWITCH BOOKS)

海図と航海日誌 (SWITCH BOOKS)

最初の1章がダレル兄弟の作品に関する思い出話になっている。
もっと分析的な文章は「小説の羅針盤」の方に載せているとか。