「その言葉を」(奥泉光)


一時帰国中にブックオフで購入。新刊では入手不可状態なので見つけたときは嬉しかった!


その言葉を (集英社文庫)

その言葉を (集英社文庫)


作家に限らず、私は大概において真面目な人が好きなのだが、真面目な人が小説を書くと
えてして考えすぎて自家中毒に陥るというか、自分の作品も綿密に計算して書いてしまって
「ああーもっとテキトーに楽しくやってもいいのになー」
みたいなドン詰まり状態に嵌ることが多い。
書評とか書かせると俄然冴えてるんだけど、創作はまた別の技術がいるんだろうなあ。


最近の奥泉氏もなんかちょっと色々背負って袋小路に入りそうな気配で密かに心配しているのだが、
この初期短編集、特に表題作は学生時代の青臭さ、気恥ずかしさを時に自虐的なユーモアに包んで
てらいもなく書き出していて、とても瑞々しい(若書きという意味ではないよ)。
同時収録の「滝」は硬質な文体ながら、これで芥川賞が獲れなかったのは話が(エンタメとして)
面白すぎたからなんじゃないかと思うくらい惹きこまれる。
この2作の要素が結合して「ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)」に発展していったのが良く分かる。
うーん、やっぱり好きだな光ちゃん。そろそろまたドカンと度肝を抜く作品を出してください!